“レプリカント”の生への渇望に涙
『ブレードランナー』(1982) Blade Runner 上映時間:1時間57分/アメリカ

ロボットの恋心、自尊心、人間との触れ合い……切なすぎるAI映画5選_5
デッカードを演じたハリソン・フォード
Photofest/アフロ

最後に、人の手によって“人に近いもの”が感情を持つようになる、というテーマとしては最も早い時期に作られた、リドリー・スコット監督の名作『ブレードランナー』(1982)に触れておかなくてはならないだろう。

フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に基づいて作られた『ブレードランナー』は、原作のアンドロイドを、レプリカントと呼ばれる人造人間として描いている。

たった4年の寿命に設定されたレプリカントたち。ところが、製造から数年経つと感情が芽生え、人間に反旗を翻す事件が起き始める。宇宙の過酷な労働現場を脱出し、地球に潜入した4名のレプリカントたちは、自分たちを作ったタイレル社の創業者タイレル博士に会って寿命を長くしてもらおうと考える。しかし、技術的に不可能であることを知り絶望してしまい……。

そんなレプリカントを追う元専任警察官“ブレードランナー”のデッカード(ハリソン・フォード)は、レプリカントのリーダーであるロイ(ルトガー・ハウアー)との闘いの中で、ビルから転落しそうになったところを助け上げられ、ロイは寿命を迎えて死んでいく。助かったデッカード自身は、タイレルの秘書だったもう一体のレプリカント=レイチェル(ショーン・ヤング)と共に逃避行の旅に出る……。

レプリカントはロボットではなく、人造の有機物から製造されたという設定だからAIとは異なるものの、テーマとしては昨今の“機械が感情を持つ切なさ”を描いた映画と同じ。80年代当時の映画ファンは、ロイを演じるルトガー・ハウアーの切なさに涙したものだった!


文/谷川建司