知事の軽々しい捨て台詞

私は4月9日、大井川知事の定例記者会見に臨み、これまでの調査報道で明らかにした過大算定の問題を直接問い質した。

――茨城県の対応は妥当と言えるのでしょうか?

「避難する市町村と避難先の市町村との間で、(避難所の)居住できる面積を算定するという話で対応をお願いしていたわけです。でも、実は居住面積以外も含まれていたという指摘を県議会で受けて、また算定し直して、後になってその半分が実は総面積と分かりました。やはり県も間に入っていたとはいえ、十分な対応ではなかったのかなと今は感じます。すべての避難所について、総面積とか、要するに避難先としてふさわしくないところまで算定していないか再確認する予定で今、指示しています」

――全県的に調査をやり直すということですか?

「いやいや、公立高校はもう十分調査が終わっていますので、それ以外について再確認するということ。各市町村との関係ではですね、十分な面積を確保できたことになっているけれど、実際そうなのかというのを図面で確認するという意味です。避難先市町村にヒアリングします」

――2013年と2018年の調査は公表されていません。こうした不透明なプロセスが杜撰な避難計画につながっているのではないでしょうか?

「どういうところを避難所にしているかの公表については今後検討する余地があると思っている。良かったですか? 毎日新聞さん。特集組んだ価値がありましたね」

最後の捨て台詞の真意は分からない。ただ、真摯に実効性のある避難計画を策定しようと思っているのなら、こんな軽々しい言葉が出てくるはずはなかった。

文/日野行介 写真/AFLO

原発再稼働 葬られた過酷事故の教訓
日野行介
震災の教訓はどこへ……ずさんな避難計画で原発再稼働が推進されている実態_2
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新書判/288ページ
ISBN:978-4-08-721228-0

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―政治家・役人を徹底的な調査報道で追及する!―
悲劇に学ばない日本の現実

◆内容紹介◆
2011年3月、福島第一原発事故で日本の原発は終焉を迎えたかに見えた。大津波の襲来という知見が事前にあったにも関わらず、規制当局は運転継続を黙認して過酷事故につながった。
安全神話に依存していたため防災体制はないに等しく、住民避難は混乱を極めた。そして国内の原発はすべて停止し、「原子力ムラ」は沈黙した。国民は学んだはずだった。
だが、「懺悔の時間」はあっという間に終わった。あれから10年以上が経ち、ハリボテの安全規制と避難計画を看板に進む原発再稼働の実態を、丹念な調査報道で告発する。著者の政治家、役人に対する鬼気迫る追及は必読。
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