所有権を取り戻すまで2年……
所有権を取り戻すまでにまず行ったのは、仮処分申請。これは、さらなる転売が繰り返されないようにするためだ。
不幸中の幸いにも、当該土地はまだ善意の買主の手には渡っていなかった。善意の買主とは、地面師の一味ではなく、何も知らない状態で土地を購入する買主のこと。「もしも善意の買主に土地が渡っていたら、所有権を取り戻すことは難しかっただろう」というのが顧問弁護士の見解だ。
その後、偽の所有者と売買契約を取り交わした大阪の人物、そして2度の転売先の相手方、3者それぞれを相手取った裁判が開始した。3者ともに悪意の買主であったことから、所有権は無事に所有者に戻ったものの、その間およそ2年。莫大な時間と費用がかかったという。
本案件は、偽造された運転免許証を信じた区にも落ち度があったことから、所有権を取り戻すにあたって不動産取得税は免除。しかしながら、登録免許税はしっかり課税されたという。
不正に売買された自分の土地を取り戻す。
当たり前のことを遂行するのに、時間も手間も税金もかかるというのが現実なのだ。それでも本案件は、不正な売買から1週間でその事実を知ることができたこと、弁護士が迅速に対応したことで被害は最小限に抑えられた。所有者はその後、所有権が戻った当該土地にすぐさまアパートを建築したという。
地面師詐欺は「空き巣」のようなもの……更地を持て余している場合は、十分に気をつけていただきたい。
取材・文/亀梨奈美