実は、外から自分を見たことがあります
――マンガの場面を、すごく細かく覚えていらっしゃいますよね。視覚的な記憶がお強い。
デスペラード だから名前と数字が覚えられないんですが(笑)。
集英社オンライン編集者(以下、編集) マンガ家さんに似ている、と思いながらお話を伺っていました。マンガ家さんは特に視覚に関しての記憶力が良い方がとても多いんです。「あの時こういうことがあったよね」と今それを見ているように、言語化できる方が多い。マンガ家さんはたぶん空間認識能力も高いんですが、プロレスラーの方も戦う時に空間認識が必要になってくると思うので、そのあたりも近いのかなと。
デスペラード そう言われてみると確かに、自分がリングのどこで戦っているかは意識しますね。若い選手は、動き回って戦っているうちにどんどんコーナー際やロープ際に寄って行っちゃうんですよ。そうすると動きに制限が出てきてしまう。基本的に僕は、リングの真ん中にいるようにしています。コーナーとかロープ際にいるのは何か考えがある時ですね。
編集 空間認識ができる方は、主観のカメラで前を見つつも、遠くにあるカメラも持っていて、自分の位置を把握できたりするのかなと思います。
――タッグの試合だと、2人がドロップキックをシンメトリーの位置で同時に放ったりして、上から見て描いた構図のように美しいと思うこともあります。
デスペラード 主観じゃないカメラ……僕、1回だけ自分を外から見たことがあるんですよ。幽体離脱したんです(笑)。
一同 ええっ!
デスペラード 与太話として聞いていただきたいんですが、すごく昔、ニュートラルコーナーに振られた時に、相手のハイキックの爪先がゴッ!てこめかみに刺さったんですよ。そしたら、そのままポンッて逆側に僕が抜けて。
――「僕が」抜けた、ですか……。
デスペラード 「あれ、俺は今どこにいるんだ?」と思ったら、客席の最前列にいたんです。で、両足から力が抜けていく俺を俺が指差して「あーっ! 俺が倒れていく!」って……。そのままゴンッ!とマットに頭がぶつかった瞬間に、ライトが目に入りました。
――そこで「戻った」ということですね。
デスペラード ここからの話は後から思い出したことなんですけど、戻ってから「俺、今何してんだっけ?」って朝起きたみたいな感じでゆっくり起きようとしたら、今度は胸にボコーン!てドロップキックをされたんです。そこで「あっ試合中だ!」って復活したんですよ。
――見てしまったんですね、ご自分を。
デスペラード 見ました(笑)。変な倒れ方をしたんで、両足首捻挫してました。
――怖かったですか?
デスペラード いやもう、怖いも何も、という感じでしたね。試合中だわ、ドロップキックで息は詰まるわ、若手時代の話なので、控室では「あの受け身はなんだ!」って怒られるわで(笑)。後からいろんな人に話しましたけど「お前、話盛るからなあ」と言われて信じてもらえませんでした。
――ということは、レスラーの間でもよくある話ではないんですね。
デスペラード よくある話ではないです(笑)。
その3へ続く
その1「『ジャングルの王者ターちゃん♡』の空気を感じた、あるレスラーとは?」はこちらから。
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取材・文 門倉紫麻