世間の潮流が変えた、『簡ロマ』長期連載
――商業BLコミックスはシリーズ作品もありますが、多くは単巻または上下巻の作品です。『簡ロマ』は最初からシリーズ作品として打ち出していこうと考えていたのでしょうか。
瀬森 当初は1巻完結で、真田と鹿嶋は付き合わないまま終わる予定でした。告白も何もなく「この2人はこんな感じで楽しく過ごしましたとさ」という終わり方にしようかと……（笑）。
赤原 そういえばそうでしたね。
担当 しかし、連載中に想像以上に読者の方々からの反響があり、このまま告白せず1巻で終わらせるより、くっつくまでをしっかり描いていただくべきだなと思い、続刊の打診をしました。読者の方々のお声がなかったら、1巻で終わっていたかもしれません。
瀬森 本当に有り難いことです……。それから2巻、3巻と続けさせていただく中で、読者の方たちが今度は「二人が結ばれたら終わるんじゃないか」とすごく危惧されはじめて。お手紙やTwitter、レビューサイトで「終わってほしくないから結ばれてほしくない！」といった声を多くお見かけしました（笑）。
赤原 今はそうは思っていないのですが、私も瀬森先生も結ばれるまでのモダモダしている過程が最も楽しいと思っていました。なので、皆さんのご意見を見て「さすがBLを愛しているみなさん、バレているな……」と（笑）。
瀬森 ふふふ（笑）。赤原先生とは「『高校生編』（4巻まで）で終わりでいいのでは？」と考えていたんですよ。今言った通り、結ばれてからの話に当時はあまり興味がなくて。
そんな中、3巻が終わったタイミングで次が『高校生編』の終わりかもしれないとなった時、心境の変化みたいなものがあったんです。
赤原 『簡ロマ』『理ロマ』では同人誌も出していたので「彼らの高校卒業後は同人誌で出してもいいよね」という話はしていて。でも同人誌でその後を描くのであれば、本誌でやってもいいのでは？と担当さんに言われたんですよ（笑）。
瀬森 確かに、と思いました（笑）。「同人誌で100〜200ページ描くなら本編でやるか！」と話して、結果大学生編をやることに決めました。
担当 今の読者の方たちは安心して読める作品を求めていると感じています。最初から付き合っている、ラブラブなカップルを描いた作品も増えてきました。結ばれたあとのお話に需要があることは理解していましたし、『簡ロマ』読者の方たちも求めている。であれば、続けていただくべきだなと。
瀬森 私たちとしても付き合ってからのお話が描けていることは、今ではとてもよかったと思っています。
©赤原ねぐ・瀬森菜々子／集英社
取材・文／阿部裕華
