腸内環境でパフォーマンスが変わる
――アスリートのうんちに着目する土台には、サッカー選手としての実体験の積み重ねがあったんですね。
そう思います。プロになるとトレーナーにマッサージしてもらうでしょう。冷たいドリンクを飲んだ翌日は「冷たい飲み物、けっこう飲んだよね」とバレるんです。
夏場は冷えたドリンクをどうしても飲んでしまうんですが、そうするとお腹の周辺が硬くなり、筋肉のバランスが崩れてしまうんです。だから僕はトレーナーの方に、お腹にお灸をすえてもらって、コンディションを整えました。後輩には「部屋が臭くなるから止めて」と苦情を言われましたけど(苦笑)。
――お腹が冷えた状態ではいいパフォーマンスができないという自覚はあったのですか?
はい。とくに僕は、お腹が冷えるとパフォーマンスが落ちてしまうタイプでした。だから冬場が苦手で、夏の暑さが厳しい時期のほうが調子がよかったですね。
僕の身体能力はプロ選手としては決して高くなかったし、身体も大きい方ではありません。コンタクトが多いポジションだったのでフィジカルが課題でしたし、足だってもっと速く走れた方がよかった。
そうしたビハインドを補うためにも、コンディションや体調の管理には人一倍、気を遣うようになりました。そうして日々のトレーニングや試合を繰り返すなかで、腸や便の状態と自分のコンディションの関係性を徐々に実感するようになって。
――それが確信に変わったのはいつごろですか?
引退間際の2015年に腸内細菌の研究者に会う機会があって、彼の話を聞くうちに「これだ!」と思ったんです。
僕は高校時代の3年間と、プロになった当初は寮生活で、チームメイトと一緒に暮らして練習していました。そこでは食事も栄養も同じ。なのに、ひとりひとり身体の仕上がりや体調、疲れ方が全然、違うのはどうしてなんだろう? とずっと疑問に思っていたんです。
遺伝子や個性の違いと言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、その要因のひとつは腸の活動や腸内細菌にあるのではないか、その時に感じたんです。同時に、それまで僕がアスリートとしてきた経験や実体験が科学的、医学的に裏打ちされた気もしました。
そして、腸の環境を可視化できれば、アスリートはパフォーマンスをより高められて、行動変容にもつながっていくのではないかと考えたのです。