出口なしの怖さ! 事故物件怪談の頂点

・小野不由美『残穢』(新潮文庫)

ここからの2冊は小説編。のはずなのだが、小野不由美の『残穢』を果たしてフィクションに分類していいものか。ひょっとしてここに書かれていることはすべて実話なのでは? 思わずそう疑ってしまうほどのリアリティが、この長編には漂っている。

主人公は著者自身を思わせる小説家。彼女のもとに久保さんという愛読者から一通の手紙が届く。久保さんの暮らすマンションでは、ときおり着物の帯が床を擦るような音が聞こえてくる。主人公はたまたまそのマンションの別の部屋でも、怪異が起こっているのを知っていた。マンションの調査を始めた主人公は、やがて近隣で不審死が相次いでいることに気づくのだが……。

ノンフィクション風に綴られた調査の記録は、派手な展開とは無縁だ。しかし淡々と進行する物語を追っていくうち、読者はいつしか触れてはいけないタブーの領域に接近していることに気づき、愕然とするだろう。

最近何かと話題を呼んでいる「事故物件怪談」の代表作にして、頂点を極めたともいえる作品。竹内結子主演の映画版『残穢 住んではいけない部屋』もよくできていたが、原作もやっぱり怖ろしい。新居に越したばかりの人、近々引っ越す予定のある人は読まない方が賢明かもしれない。

ちなみに小野不由美には『鬼談百景』という『残穢』とほぼ同時期に発売された怪談実話集もある。秘かにリンクした2冊をあわせて読むことで、より出口なしの恐怖を味わえるのでおすすめだ。

閲覧注意! マニアが心底震え上がった、極上にして最怖の怪談本5選_04
出典:小野不由美『残穢』(新潮文庫刊)