そんな2012年の大阪桐蔭の勝ち上がりを振り返る。

初戦は藤浪が完投し、木更津総合に危なげなく勝利。大竹耕太郎(現・福岡ソフトバンクホークス)を擁する済々黌との3回戦では、澤田が先発する。この試合は、同点の4回に澤田が自らを援護するホームランを打ち、次打者の森も2者連続ホームランを放ったことで大竹を攻めたてる。さらに、6回には4番の田端のホームランも出て、一発攻勢で勝利した。

準々決勝は、大阪桐蔭が春に苦しめられた浦和学院に勝利した天理。天理には、近畿大会で敗れており、因縁の相手でもある。しかし蓋を開けてみると、初回から森の先頭打者ホームランから始まり、藤浪もホームランを放ち、得点を積み重ねていった。

藤浪も投げては13奪三振を記録する完投勝利。8対1の大差で勝利したが、この試合の藤浪について、西谷監督が「今日は球数も少なく、藤浪を褒めてやろうと思ったら被弾。何か課題を残してくれる投手です」(「週刊ベースボール 第94回全国高校野球選手権大会総決算号」ベースボールマガジン社)とコメントしたのが印象的だった。

準決勝の相手は明徳義塾。サイドスローから最速145km/hを投じる右腕、福永智之は、6月の練習試合で大阪桐蔭を苦しめた。しかし大阪桐蔭は福永から、初回に田端の犠牲フライで先制。6回に連打で3得点を積み重ねた。明徳義塾は、福永が5回まで1失点と好投していたことから、継投が後手になり、6回に追加点を許す形になった。大阪桐蔭先発の藤浪は、2安打完封と完璧に近いピッチングで決勝にコマを進めた。

決勝の相手は、センバツでも決勝で顔を合わせた光星学院。2011年夏から3季連続で甲子園の決勝に進んでいた光星学院は、この年プロに行くことになる田村龍弘(現・千葉ロッテマリーズ)・北條史也(現・阪神タイガース)を主軸に据え、念願の東北勢初の優勝を狙っていた。

準々決勝では、田村・北條のコンビで桐光学園の松井裕樹(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)を攻略。このコンビは準決勝までチーム22打点のうち17打点を叩き出していた。しかし決勝で藤浪は、田村と北條から2奪三振ずつ奪い、2安打に抑えるピッチングで春夏連覇を成し遂げた。

圧倒的な強さを誇った2012年の夏で大阪桐蔭が唯一危なかった試合は、大阪府予選決勝の履正社戦。この試合ではそれまで1失点ピッチングだった藤浪が、8回に履正社打線から連打を浴び追い上げられた。そのような危機を潜り抜けたためか、甲子園の戦いは初戦から決勝までパーフェクトに近いものだった。

甲子園の観客も、大阪桐蔭が凄すぎるが故に、静かに見守るしかない、といった様子だった。この優勝から大阪桐蔭は、甲子園で「勝って当たり前」と見られる常勝チームになったと言っても過言ではないだろう。