日本には数多くの美術館があり、ゴッホやピカソなど有名なアート作品が来日すると、多くの来館者で賑わう。その動員人数は世界でも2、3位を争うほどだ。

そんなアート好きな日本人だが、「アートを所有する」という面では急になりを潜める。「アートは富裕層だけが所有できる贅沢品であり、一般人には購入できない」という印象が強いからだろう。

そんな「アートを所有する」という難題に切り込んでいるのが、2018年創業のスタートアップ「株式会社ANDART(アンドアート)」である。観て楽しむだけではないアートの魅力について、同社取締役の高原大介さんに話を伺った。

※取材は「b8ta Tokyo Yurakucho エクスペリエンスルーム」で開催されている『データでみる美術展 by ANDART』会場にて実施した。この展示は2022年8月15日まで延長予定。

「情緒的」かつ「投資的」な魅力をもつアート

まずは高原さんに、日本・海外アート市場の規模や現状、コロナ禍での変化について聞いた。

1万円で投資できるアートがずらり!気鋭のスタートアップANDARTが仕掛ける「アートの民主化」_1
株式会社ANDART 取締役COO 高原大介さん

「アート・マーケット2022によると、グローバルのアート市場は651億ドル=8.4兆円(1ドル130円として)規模で、コロナ禍の前よりも拡大しました。この要因として、コロナ禍でお金の使い道が限られた『超富裕層』が、アートに積極的な投資をしたことが挙げられます。

一方、日本のアート市場は2,000億円程度に留まり、コロナ禍以前よりも若干縮小傾向です。

海外の資産家がアートを買う理由のひとつは、アートが資産を形成する『ポートフォリオ』の一部として定着しているから。野村資本市場研究所の調査によると、世界の超富裕層は資産の5%程度をアートなどの『収集品』で保有しています。

日本の所得水準やGDPから見ても、アートを購入するポテンシャルはあります。それなのにアートへ資産が回らない背景には、そもそも『アートは買えない』という認識が強く、アートに投資する文化がないからではないでしょうか」(高原さん。以下略)

1万円で投資できるアートがずらり!気鋭のスタートアップANDARTが仕掛ける「アートの民主化」_2
『データでみる美術展 by ANDART』で展示中の、アンディー・ウォーホル
《Campbell's Soup I (Pepper Pot)》。思ったよりも大きい

そもそもアートには、観て楽しむ「情緒的な魅力」と、資産としての「投資的な魅力」がある。日本ではこの後者に関する認識が薄い、と高原さんは言う。

ではアートを投資対象として見たとき、どのようなメリットがあるのだろうか。主に2つの魅力を教えてもらった。

「ひとつは、長期保有によって大きな価格上昇が期待できる点です。先日、元ZOZO社長の前澤友作氏が、約62億円で購入したバスキアの大作《Untitled》(1982)を手放しましたが、その売却額は約110億円と高値でした。こうした価格上昇が見込めるのが大きな魅力です。

もうひとつは、株式や債券など他の金融資産との相関性が低い点です。コロナ禍やウクライナ情勢など、市場を左右するような出来事が多い中では、資産をいかに分散投資するかがポイントとなります。アートに投資しておけば、バランスのよいポートフォリオが形成できるのです」