矢本悠馬とはプライベートでも仲が良いので、素直に演技することができた。

「未だ世に出る名もない差別に衝撃」。間宮祥太朗さんインタビュー【60年ぶりの映画『破戒』に主演】_16
学生時代からの親友、銀之助を演じるのはプライベートでも仲のいい矢本悠馬さん。
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──その父の教えを破って、自分のことを友人や生徒に告白する場面があります。今の時代では、自分のアイデンティティや特性について、カミングアウトしたくなければ話さなくてもいいと、人権を守るという姿勢が尊重されています。
丑松のカミングアウトの場面はどう解釈されて演じましたか?


「丑松が親友で、同僚の教員である銀之助に自分のことを告げる場面があるのですが、演じている矢本悠馬とは、2014年のドラマ『水球ヤンキース』から何度も共演していて、プライベートでもずっと仲良くしていたので非常にやりやすかったし、あれこれ考えすぎず、素直に演技をすることが出来ました。

生徒たちに話す場面では、丑松は自分から積極的に告白したいから告白するわけではなくて、自分にとって大事な生徒たちひとりひとりに、自分の経験と感情を伝えることで、子どもたちがこの先、自分の頭で考えて、成長して大人になる過程での一つの材料として、いつかふっと、『先生はこういう思いでいたのかな』と思いいたるように、種のまくような気持ちだったかと思っています」

水平社宣言から100年、でもまだ差別が残っていることが衝撃的

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──2022年は水平社が設立され、水平社宣言が行われてから100年目にあたりますが、色々リサーチされる中で、間宮さん自身が改めて知ったことの中でショックだったことは何ですか?

100年以上、月日が経ってなお、差別がこの社会に残っていることです。被差別部落だけの差別だけでなく、新しい差別だったりとか、新しく名前が付いた差別だったり、もしかするとまだ名前も付いて無くて、ジャンル分けがされてない差別もありますよね。それが未だに出てきていることがやっぱり、改めて衝撃的というか。

自分は今回の『破戒』は部落差別の背景があるけれども、部落差別にだけフォーカスした映画だとは思ってないんでいません。だから、先ほども言いましたが、令和の今、60年ぶりに映画化される意味があると思っています。

元々、水平社100年に向けて、最初はドキュメンタリー映画で歴史を紹介する案もあったと聞いています。それをドキュメンタリー映画じゃなくて、劇映画にして、令和の映画館で上映するということが、今、この世の中の空間に漂っている差別の根や空気感とリンクして、自分が演じる意味もあるし、見てくれる人達もそれぞれの感じ方をしてくれることでしょう。そこに映画化の意味が何かしらあると思います」

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丑松は被差別部落出身の思想家、猪子蓮太郎(眞島秀和)を尊敬し、交流を重ねていたが、あるとき、悲劇が起きる。
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破戒

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1948年に木下恵介監督、1962年に市川崑監督と名だたる巨匠が映画化してきた島崎藤村の同名小説「破戒」を60年ぶりに映画化。
明治後期を舞台に、亡き父(田中要次)から被差別部落出身の出自を隠し通すように強い戒めを受け、教師となった瀬川丑松(間宮祥太朗)の内面的葛藤が静かに描かれる。丑松が思いを寄せる下宿先の士族出身の志保に石井杏奈、親友の銀之助に矢本悠馬が扮している。改めて日本社会の差別について考えさせられる一作。
監督は、椎名桔平主演の映画『発熱天使』(高崎映画祭招待作品)やキネマ旬報「文化映画部門」ベストテン7位の『みみをすます』(教育映画祭最優秀賞・文部科学大臣賞)を監督した前田和男。

出演:間宮祥太朗 石井杏奈 矢本悠馬 高橋和也 小林綾子 七瀬 公 ウーイェイよしたか(スマイル) 大東駿介
竹中直人 / 本田博太郎 / 田中要次  石橋蓮司  眞島秀和
原作:島崎藤村『破戒』 脚本:加藤正人/木田紀生 監督:前田和男 音楽:かみむら周平

2022年製作/119分/日本
企画・製作 全国水平社創立100周年記念映画製作委員会  制作 東映株式会社
制作協力・配給/宣伝 東映ビデオ株式会社 制作プロダクション 東映株式会社京都撮影所

©全国水平社創立100周年記念映画製作委員会

★7月8日(金)から丸の内TOEIほか全国ロードショー公開。

『破壊』公式サイト 


執筆参考文献:
荒木謙『『破戒』のモデル-大江礒吉の生涯』 解放出版社
東栄蔵『大江磯吉とその時代-藤村の「破戒」のモデル』 信濃毎日新聞社
水野永一『『破戒』のモデル-大江礒吉考』 ほおずき書籍

撮影/菅原有希子

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