「高市首相が名指しで見たがる作品だ」

別班については、シーズン1が放送された2023年、石破茂元首相が番組で肯定も否定もしない冗談で応じた。今年7月には小泉進次郎防衛相が、別班は存在していないと述べている。政府が一貫して否定する組織の物語を、中国側は日本の現実の意図を映す鏡として読もうとしている。今回の反応の本質は、この落差にある。

CCTVの論評は冒頭で、このドラマを高市首相が名指しで見たがる作品だと紹介した。首相が国会で番組を録画していて年末年始に見たいと述べたと報じられており、その点まで批判の材料に加えられている。ドラマへの批判は、そのまま首相への批判へとつながった。

25日には、微博(ウェイボー)の検索ランキングで関連の話題が一時1位となった。官製メディアが論点を示し、ネット世論がそれを増幅する。中国ではおなじみのこの構図が、日本のドラマを素材にして再現された形だ。

画像はイメージです
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ポケモンや名探偵コナンも、中国軍系メディア「軍国主義の浸透」

中国が日本のカルチャーをやり玉に挙げるのは初めてではない。今年2月には、ポケモンや名探偵コナンが中国軍系メディアから「軍国主義の浸透」と批判され、各地のイベントでコスプレが禁じられたと報じられた。日本のポップカルチャーを安全保障の文脈で読む流れは、すでに定着しつつある。

環球時報は1993年に人民日報の傘下で創刊され、強硬で国家主義的な論調で知られてきた。今回も「ネット上の声」を引用する形を取っている。官の立場を民意の体裁で語れば、党機関の公式見解ではないという逃げ道を残したまま、メッセージだけは十分に届く。計算された手法とも読める。

同紙については、論調の激しさで知られた胡錫進氏が2021年12月に編集長を退いた際、党中央が「政治的な指導」を強めたとの観測も出た。今回の批判が国営テレビと同時期に出そろった点も、偶発的な炎上とは言いにくい。

今回の騒動の背景にあるのは、日中関係の冷え込みだ。高市早苗首相が台湾有事に関する国会答弁をしてから、11月7日で1年になる。中国は日本への渡航自粛を呼びかけ、今年は軍民両用品の対日輸出管理を強化した。レアアースなど重要鉱物の供給不安も続く。ロイター通信は、日本政府関係者が口をそろえて「高市政権のうちは関係改善が難しい」と語ったと報じている。