目利きの力を信じられることが大切

「仕事って要領よく回していく楽しさもあると思うんですが、最新のAIはそういうサラリーマン力も高い。(僕自身)プロサラリーマンとして、それなりにシゴデキでやってきたつもりなので、けっこう自信喪失していますね(笑)。

社内も含めて多くの人がうっすらとそんな感覚を持ちながら働いている気がしますし、日々の激しい変化をとにかく新鮮なものとして味わっていくしかない。ちょっとこれまでにない変革が来ているので」

AI時代にどう仕事と向き合うかを語った木村弘毅社長(撮影/二瓶彩)
AI時代にどう仕事と向き合うかを語った木村弘毅社長(撮影/二瓶彩)

今の時代、日々の仕事に対するモチベーションを保つことに大きな困難を感じている人は少なくないだろう。

自らを「叩き上げ」「プロサラリーマン」とも呼ぶ木村氏が、難しい意思決定を迫られたとき、そのキャリアを通じて大切にしてきたことは何か?

「“自分で味見ができる”ということは非常に重要なことだと思います。ゲームであれば、“おもしろい/おもしろくない”をジャッジできる目利きの力ですかね。

昨今は市場でA/Bテストすれば簡単にデータが手に入るし、とくにIT系って大量のデータを持っているから、こちらのほうが数字出ているから良いという判断を安易にしがち。でも、それって味のわからない料理人が美味しいか、美味しくないかをお客さんに聞くのと同じだと思うんです」

会社という組織の中で自分の意見を言うことは自分の評価に直接関わってくるだけに、簡単なことではない。

「自分が良いと思っても、他の人には全くウケないということはあるので、素直に数字と向き合う必要はあると思います。でも、どんな世界でも最終的に生き残っていく人は、自分が本当に良いと信じるものをきちんと押すことができて、意思決定ができる人なのかなと私は感じていますね」

木村氏の目利きによって生み出された「モンスト」は、友人同士のコミュニケーションを盛り上げるプレイ要素が、ゲームシステムとしてふんだんに詰め込まれていることが長年愛される魅力のひとつ。

最後にその開発背景を、電話のような同期型(リアルタイムの)コミュニケーションよりも、SNSなどの非同期型(タイムラグのある)コミュニケーションが時代の主流と見なされていた、当時の空気感から振り返った。

「『mixi』が流行っていた頃などは社会的にも非同期型が最先端という風潮が強く、社内でも一種の教義のようになっていましたが、『モンスト』は、“だって、みんなで集まって遊ぶのって楽しいじゃん?”とか思って企画を出したんですよね。それだけ同期型のニーズはビジネスとしても化ける可能性を感じていました。

わざわざ友達と集まったり、時間が拘束されたりするコストは高いけど、同じ瞬間を共有できる同期型コミュニケーションの熱量の高さは特別なもの。

会社の教義・常識とあえて外れたことをやるのは大変でしたけど、やっぱり戦うべきところは戦わなきゃいけない。自分が戦うための依り代として、目利きの力を信じられることが大切なんです」

変化のスピードが増すほど、頼れるものは外から借りてきた答えではなく、自分の内側にある基準になっていくのかもしれない。

木村社長のジャケットにはMIXIのコンテンツやロゴのワッペンがついている(撮影/二瓶彩)
木村社長のジャケットにはMIXIのコンテンツやロゴのワッペンがついている(撮影/二瓶彩)
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取材・文/伊藤綾

(撮影/二瓶彩)