公営競技向けサービスでも共感ベースのつながりを重視
「営業キャッシュフローの安定化を図ることも大きな課題でした。ゲーム事業は一発当たると大きい分、変動も激しい。SNS・ゲームに変わる安定した事業の柱が必要だったんです」
3本目の中核事業として木村氏がとくに注力してきたのが、ベッティングと観戦からなるスポーツ事業だ。
「海外のスポーツベッティング、日本の競輪・競馬などもですが、スポーツ界って年間の試合数やレースの開催数が決まっていて、そこから一定の手数料・収益を得られるので、ビジネスモデルとしては非常に手堅いんです。
しかも、とくに特定のチームを応援するファンは、基本的には家族など身近な人とのコミュニケーションの影響を非常に大きく受けている。そこにMIXIとしての可能性があったという感じですね」
スポーツ領域に参入するIT企業は国内外で少なくなく、スポーツエンターテイメント×IT技術の親和性の高さが注目されてきた。しかし、同社のスポーツ事業はコミュニケーションサービスを基盤としている点に独自の強みを持つ。
「我々は結局どう転んでもコミュニケーション屋で、さまざまなコミュニケーションの機会と場所をつくり続けることを最重要の使命にしているんですね。
時代の変化とともに『変えたこと/変えていないこと』で言うならば、変えてこなかったことは、“コミュニケーション”という軸。
なので、スポーツ事業も単純な技術的な横展開に主眼を置いているというわけではないんです」
同社が「ソーシャルベッティング」と呼ぶ、友人や知人とのコミュニケーションの要素を重視した公営競技向けサービスにも、長年培ってきたコミュニケーションの機会づくりの構造は活かされている。
競輪・オートレース投票サービス「TIPSTAR」では「のっかりベッティング」という回収率などの指標から、他のユーザーの予想に乗っかって賭けられる仕組みを導入。フォローした予想屋(一般ユーザー)のポストが流れてくるタイムライン機能もある。
「同じレースに賭けて、リスクを負ったもの同士で観戦するほど、アツくなるものはない。一言で言って、非常に燃える。
我々はコミュニケーションのあり方を共感と対戦の2パターンで考えることが多いんですが、『TIPSTAR』の場合は同じ車券を買い、同じ勝利を目指して応援するという、共感パターンを重視した設計になっています」
スポーツ事業は売上高の急速な拡大に加えて、海外スポーツベッティング企業「PointsBet」の連結化などで、収益性の向上も図られる見通しだ。安定的な売上と利益を確保しつつあり、主力ゲーム事業で新たなトライもしやすい環境になってきたという。
「元コナミのヒットメーカー兼吉完聡、ウォルト・ディズニー・ジャパンでゲーム事業などを統括していた竹野太一の2名の実力のある有名プロデューサーを招へいしました。
新しいゲームづくりにトライをしているところですが、こればかりは伸るか反るかの世界。なので、事業の多角化によって安定化を図ってきたというイメージです」
SNS「mixi」からゲーム「モンスト」、そしてスポーツ事業へと領域を広げてきたMIXI。その根底には常に「コミュニケーションの機会と場所をつくり続ける」という使命が存在する。事業の多角化によって新たなトライができる環境を整えた同社が、「モンスト」の10年ぶりの海外再挑戦でどのようなストライクショットを決めるのか、今後の展開から目が離せない。
取材・文/伊藤綾
(撮影/二瓶彩)










