日本語学校と店がつながる意味

ただ、働きたい留学生と、人を採用したい店があっても、自然に結びつくとは限りません。日本語に自信のない学生は応募をためらい、オーナーも、どう教えればよいのか不安を抱えています。

そこで役割を果たすのが、日本語学校とコンビニ本部の連携です。学校は、留学生に仕事の情報を届けられる場所です。同時に、授業への出席や日本語の習熟度など、店だけでは見えにくい学生の様子を知っています。

本書でも、京都を舞台に、学校と本部がつながり、求人や学生への支援を進める取り組みを描きました。学校から見れば、学生が校外でどのように働いているかは分かりにくい。店から見れば、仕事と勉強を両立できているかは見えにくい。本人の同意を得ながら必要な情報を共有できれば、困りごとにも気づきやすくなります。

実際の本部の取り組みとしても、セブン&アイは2018年の公表資料で、日本語学校での留学生向けアルバイト説明会、外国人向け初期教育テキスト、レジ接客研修などを紹介しています。採用から初期教育までを行う「セブン‐イレブン・アカデミー」も実施していました。

人を紹介して終わりではなく、働き始められるところまで支える。忙しい店で一から教える負担が軽くなれば、オーナーも受け入れやすくなります。留学生にとっても、分からないままレジに立つ不安を減らせます。

コンビニで働けば、自動的に日本語が上達するわけではありません。質問できる相手がいて、分からないことを教えてもらえる。その環境があってこそ、仕事が学びにもつながります。

留学生は、何時間でも働けるわけではない

最後に、外国人スタッフを考えるうえで欠かせないのが、在留資格です。外国人を一括りにして、誰もが同じ条件で働けると思うことはできません。

「留学」は、学校で学ぶための在留資格です。アルバイトには資格外活動許可が必要で、通常は原則として週28時間以内。複数の店で働く場合も、勤務時間を合計して28時間以内です。1店舗ごとに28時間働けるわけではありません。

学校が学則で定めた夏休みなどの長期休業中には、1日8時間以内という扱いになりますが、通常の授業期間とは区別しなければなりません。

人が足りないから、あと一日入ってほしい。本人も、生活費のためにもっと働きたい。双方の希望が一致しても、許可の範囲を超えてよいことにはなりません。学業を終えて本格的に就職するなら、仕事の内容に合った在留資格への変更など、別の手続きと条件の確認が必要です。

店に人が必要なように、留学生には学びと生活があります。働いてくれることを頼りにするなら、その人が学ぶ時間も守る。コンビニが外国人に選ばれる職場であり続けるには、教えることと同じくらい、この姿勢が大切だと私は考えています。

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文/村尾信一  写真/Shutterstock

店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。コンビニで働く外国人たちと店主一家の23年(飛鳥新社)
村尾信一
店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。コンビニで働く外国人たちと店主一家の23年(飛鳥新社)
2026/9/30
1650 円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4868011651
・コンビニ経営なんて、やるんじゃなかった
・店長、車が店に突っ込んできました!
・揚げ物を一日1000個売れ
・牛丼には箸ですか?スプーンですか?
レジの向こうには、それぞれの人生がある。

日本のコンビニで働く外国人は8万人を超える。
これは、人手不足に苦しむ一軒のコンビニと
それを支えた人たちの、実話に基づく物語である。

50歳で百貨店を辞め、妻とともに長崎から上京し、東京・西麻布でコンビニを開業した坂本哲郎。売上不振、50万円の盗難、車の店舗突入、相次ぐクレーム、2年間一日も休めない、など想定外の出来事に追われる。
深刻な人手不足のなか、坂本が採用したのは、日本へ来たばかりの外国人留学生たちだった。敬語が使えない。時間を守れない。お釣りを間違える――日本人には当たり前のことが、彼らには通じない。坂本は仕事を一から教える一方、学校、住まい、結婚、在留資格など、生活の相談にも乗るようになる。やがて、留学生たちは正社員となり、店長として店を任されるまでに成長する。
いかにして坂本は、外国人スタッフたちから「日本のお父さん」と呼ばれるようになったのか。コンビニ本部に30年間在籍した著者が、自身の経験と関係者への取材をもとに描く、店主一家と外国人スタッフの23年の物語。
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