アニメ好きに裏打ちされた逮捕劇
コンビニ強盗を取り押さえた勇敢な女性は梁果琳(りょうかりん)さん(23歳)。彼女に話を聞いた。
──思わぬところで事件に遭遇し、大変だったと思います。当日の状況を教えていただけますか。
梁果琳(以下同) 9月16日のことでした。私はフリマサイトの発送をしようと思ってコンビニエンスストアに入店したのですが、そこで缶ビールを盗もうとした容疑者と店員さんがもみ合っているのが見えました。
とっさに身体が動いて、気づいたらヘッドロックをしていました。
反射的に抑え込んでしまったものの、その時点では容疑者の顔をはっきりと見たわけではありませんでした。
ヘッドロックをして数秒後に初めて容疑者の顔を見たんです。やはり容疑者も人生がかかっているからか、抵抗は非常に激しいものでした。
容疑者に腕を噛まれて数秒して、「もしかすると腕を切られるのではないか」という恐怖感や焦燥感に襲われました。
警察に引き渡したあとも、周囲に容疑者の仲間がいたらどうしようと不安になりました。あるいは容疑者本人による報復の可能性もゼロではありません。
とっさに動いたものの、そうした恐怖感は確かにありましたね。
──とっさに動くというのはすごいですね! なにか武術の心得があったのでしょうか?
いえ、私は茶道部でした。お褒めいただきうれしいのですが、事件後、さまざまな賞賛をいただくなかに、「容疑者が武器を持っていたらどうするんだ」というもっともなお叱りもあり、深く反省したところです。
ちなみに、なにか特定の武術をやっていたことはありません。
昔から『バイオハザード』や『名探偵コナン』が好きだったりしたから、とっさに動いてしまったのかもしれません(笑)。とにかくアニメが好きでして。
──アニメ好きに裏打ちされた逮捕劇だったわけですね(笑)。その後、捜査協力となるかと思いますが、事情聴取などに時間が割かれると聞きます。
そうですね。犯罪捜査に欠かせないものですし、また冤罪を防ぐ重要な意味もありますので、日本国民として精一杯の協力をしたいと思っています。
もちろん、捜査員の皆さんにもたいへん頭が下がる思いです。
ただ、個人が置かれた環境によっては、十分に協力ができないこともあるのではないかと私は考えています。
たまたま私の職場は非常に有給休暇が取得しやすく、働きやすい環境ですが、必ずしもそうした状況の人ばかりではない現実がありますよね。
せめて公的な捜査に協力する際には、会社を必ず休める制度を創設するなどしてもよいのではないかと今回の件を受けて考えました。