「ここで自分の髪を守ったら、一生後悔する」
実はその頃、旭岡さん自身は髪を伸ばし、パーマをかけようと半年以上育てている最中だった。しかし、少年の不安な表情を見た瞬間、「自分の髪型なんてどうでもいい」と思ったという。
「大好きな漫画『僕のヒーローアカデミア』のデク(緑谷出久)じゃないですけど、『考えるより先に体が動いてた』というか。現実と戦う少年を前にして、ここで自分の髪を守ってたら一生後悔するだろって。髪なんて切ってもまた生えてくる。だったら、俺も一緒に背負おうと思ったんです」
躊躇なく自分の頭にバリカンを滑らせた旭岡さん。そうして「1人じゃないよ」と少年に語りかけると、ずっと笑顔を保っていた少年の目から、一気に涙があふれ出した。見守っていた父親も涙したそうだ。
実はこの動画、一切の仕込みや撮影の事前計画はなかったという。この映像が残ったのは、隣のバックヤードにいた代表・目黒さんの機転があったからだ。
「隣の部屋で作業してたら、なんだか雰囲気がピリッとしているなって感じて。『大丈夫かな』と思って覗いたら、亘哉が自分の頭にもうバリカン入れてたんですよ(笑)。『え、ちょっと待って待って!』って焦って飛び出しました」(目黒)
目黒さんは急いでスマホを取り出し、動画で撮影した。
「せっかくだから記念に残そうぜって思いました。SNSに載せる・載せないは別として、この時間は絶対に残してあげた方がいいと思ったんです」(目黒)
「僕が自分で撮影してたら、それこそ『仕込みかよ』ってなっちゃいますからね(笑)。目黒さんが撮ってくれたんです。
後日、僕がいきなりスキンヘッドになったんで、友達から『なんか悪いことしたの?』って聞かれたりもして(笑)」(旭岡)
動画が大きな反響を呼ぶと、SNS上では少年の事情を知らない層から「パフォーマンスだ」「自己満だ」といった批判的なコメントも寄せられた。だが、旭岡さんの芯は一切ブレない。
「世の中いろんな意見があるのは当然だし、どうぞご自由になんでも書いてくださいって感じです。批判も嫉妬もどうでもいい。そんなことより、大人として彼を守ってあげることの方が100倍大事ですから。
会社員のお父さんが急にスキンヘッドにするのは世間的に難しいじゃないですか。でも、理容師の俺なら何のデメリットもない。だったら俺が背負えばいい、ただそれだけです」(旭岡)













