保守とは「約束を守ること」である
高市政権では前代未聞の出来事が続いて起きてきた。自民党内の議論が封じられ、無茶な国会運営も目立つ。幅広い国民保守政党としてのあり様がずい分変質しているのではないか。保守政治について森山に問うた。
「自民党が国民政党であることは間違いがありません。したがって右の意見、左の意見、それぞれが党内にあるのは当然のことです。それを一方だけの議論で済ませるというのは、国民政党である建前からするとありえない。それでは困ります」
「保守の定義は約束を守るという点にあると思っています。裏切らないことではないでしょうか。1997年に二階堂先生が最後の訪中をされたときの約束もそうです。その夜、北京飯店に宿泊して二階堂先生といっしょに食事をしました。
そのとき先生は『森山君は若いんだから、小異があることもよく認識しておいてくれ』とおっしゃいました。共産主義の国にもある種の保守の流儀みたいな感性があるのです。互いに小異を残して今日があると認識しておくという約束を守らなければなりません」
森山はさすがにあからさまな政権批判をしないが、高市政権に危機感を抱いているのは間違いない。国対族議員として国会運営に奔走してきた森山は現状を憂う。
「高市政権では梶山弘志さんが国対委員長をやられ、一生懸命努力をしておられます。ご苦労は絶えないでしょう。私は第二次安倍政権と菅政権で国対委員長をしてきましたが、総理が委員会に出席しない苦労などはまったくありませんでした。
外交日程が入っているから少し国会への出席の時間をずらしてくれという程度です。予算委員会にも出て来ず、陳述書で答弁に代えるなんてことは考えられません」
高市の地元奈良の秘書が陳述書で弁明しているネガキャン動画騒動の詳細は割愛するが、まさしく長い日本の憲政史上に存在しなかった首相の振る舞いというほかない。はたしてどこまで首相自身や事務所がこの件にかかわっていたのか。
8月31日に発売された週刊現代の9月14日号では、夫の山本拓が2024年からくだんの動画業者と付き合いがあり、高市事務所との動画作成にも関与していたとする特集記事が掲載された。この先の2026年秋の臨時国会でも、ネガキャン動画騒動は尾を引きそうだ。森山が苦言を呈する。
「2月の衆議院選挙であれだけ圧倒的な勝利をされましたから、民主主義で数の多い方の意見が通るのは当たり前でしょう。けれど、反対の意見を完全に無視していいのかというとそれは違います。他の意見もあるということを受け止めなければなりません。
中国との関係でいっても、隣国ですから長い歴史のなかでいろんな齟齬がありますが、必要以上いがみあってはいけません。中国にしても日本にしても大国であることに間違いがありませんから、そこをしっかり自覚しなければなりません」
対中外交の展望は開けるのか。国家の安全保障上、スパイ問題などもを含めて中国には気を付けなければならないという意見も根強く、事実、その懸念も捨てきれない。
「対中関係の改善はなかなか見えてきていませんが、いろんなところで協力関係が必要なんじゃないでしょうか。安全保障の問題も当然のことですが、それを表で言えばバカみたいな話になります。そこは心しておく、ということではないでしょうか」
森山は日中友好議連の若手議員に9月の訪中を呼びかけているという。かたや高市は秋の内閣改造、党役員人事に向け、自民党の全国会議員にどんな職に就きたいかというアンケート調査をしてきた。これもまた異例中の異例の出来事だ。
400人以上いる国会議員の希望と睨めっこする日々だとも伝えられる。もはや笑い話のような事態というほかない。が、実際は笑い事では済まされない。(敬称略)
取材・文/森功













