少年たちの「パフォーマンス化」した謝罪

斉藤 クリニックを訪れる10代の性加害少年たちは、問題行動が発覚したときには、すでに複数回、性加害を繰り返しているケースがほとんどです。

彼らは、これまで加害行為を見過ごされてきました。たとえ加害行為が発覚しても、周囲の大人たちが「盗撮は確かに良くないことだけど、これも子どものいたずらのひとつだよね」「男の子はこれぐらい元気があっていい」などと被害を矮小化し、きちんと介入してこなかった。こういった経験から、「盗撮がバレても、この程度で済むんだ」という負の成功体験という学習になっているんです。そのため彼らは、いざ加害が発覚しても、「すみませんでした。もうしません」と謝罪すればなんとかやり過ごせるという、いわば「処世術」を身につけてしまっている。

永守 「謝罪」といっても、心から「被害者に対して申しわけないことをしてしまった」と詫びているのではなく、その場を切り抜けるためのパフォーマンスや手段になっているのですね。それでは、被害者も浮かばれません。

斉藤 おっしゃるとおりです。そこで加害者臨床の現場では、加害者に安易な反省を求めません。

盗撮から少し話が逸れるのですが、この「パフォーマンス化した謝罪」は、万引きがやめられない「万引き依存症(クレプトマニア)」の人にも同様の傾向がみられます。彼らの中には過去を振り返って、「もう、万引きなんて絶対にしません」「自分はなんてことをしてしまったのか……。心から反省しています」など、涙ながらに反省の言葉を述べる人がいます。そのとき、本人は至って真剣です。けれど、クリニックからの帰り道、コンビニを見かけると、まるで吸い込まれるように店に入って、万引きをしてしまうんです。こういったケースは、けっして珍しくありません。

永守 反省した直後にもかかわらず、再犯してしまうんですね。

斉藤 やはり大切なのは、「反省しています」と言葉を述べることではなく、「万引きをやめ続ける」という行動変容です。これは、盗撮などの性加害でも同じことがいえます。「すみませんでした。もう絶対にやりません」と謝罪の言葉を口にするのではなく、二度と加害をしないための専門治療を受けること。これが新たな被害者を生まないことにつながります。

再犯防止の取り組みについては第6章で詳しく説明していきますが、性加害少年と向き合うときにも、この視点は欠かせません。

永守 実は以前、私たちの団体に加害少年から相談が寄せられたことがあるんです。彼は盗撮したことを後悔し、「警察に自首すべきか」「進路はどうなるのか」「親を悲しませてしまうのではないか」など、激しく葛藤していました。しかし、いざ加害少年から相談を受けても、私自身「ここに相談すればいいよ」と即座に提示できる相談窓口が思い浮かばなかったんです。

性被害者支援の窓口は、メディア等により周知が少しずつ進んでいます。しかし、特に未成年が加害者の場合、相談窓口の存在はほとんど知られていないですし、その数も圧倒的に不足していると感じます。

斉藤 最優先すべきは被害者の支援です。とはいえ、「加害行為をやめたい」と願っている子どもたちも適切に支援し、更生へ導くことが、結果として被害をなくすことになりますからね。

永守 加害少年が孤立せず、気軽に頼れる相談環境をつくることは、今後の重要な社会課題だと実感しています。

写真/shutterstock

校内盗撮 (インターナショナル新書)
斉藤 章佳
校内盗撮 (インターナショナル新書)
2026/8/7
1111円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4797681772
スマホ1台で、子どもが被害者にも加害者にもなる――。
今、学校で急増する盗撮。教員が児童・生徒をターゲットにするだけでなく、子ども同士の事例も相次ぐ。
「校内盗撮」という性暴力から子どもを守る方法とは? 保護者・学校関係者、必読の書!

2025年、名古屋市の小学校教諭の逮捕がきっかけで発覚した教員グループによる盗撮事件。
教員らが学校で児童・生徒を盗撮し、その画像をSNSのグループチャット内で共有していたことが報じられ、世間に大きな衝撃を与えた。
この他にも近年、学校での盗撮をめぐるニュースは後を絶たず、実際に盗撮被害は急激に増えている。
ただし、スマホやSNSが当たり前になったこの時代、教員が加害するばかりでなく、子ども同士の盗撮も目立つ。
さらに、日進月歩の生成AIを悪用した性的ディープフェイクもはびこり、事態はますます複雑化・深刻化しているのだ。
なぜ、学校という空間で盗撮が相次ぐのか。そして、大切な子どもたちを守りたい保護者、教育現場、社会は、こうした状況に対してどのように手を打つべきなのか――。
「校内盗撮」という深刻な性暴力の現実と、子どもを被害者にも加害者にもさせないための対策・予防法を、3500人以上の性犯罪者の治療プログラムに携わってきた著者が豊富な臨床経験をもとに解説する。

【特別対談も収録】
・盗撮事件を起こした有名中学受験塾元講師A
・永守すみれ (ネットパトロール団体「ひいらぎネット」代表)
・末冨芳 (教育行政学者、日本大学文理学部教育学科教授)
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