子どもを加害者にする「引力」

永守 現代の子どもたちを取り巻く環境で、個人的にもっとも危惧しているのが「デジタル性暴力の引力」です。

思春期の子どもが性的なコンテンツに興味を抱くこと自体、ごく自然な成長の証しです。ひと昔前なら、思春期の子どもが性的なコンテンツに初めて触れるのは、成人向けDVDや雑誌といったメディアが主でした。しかし今では、SNSやYouTubeの動画など、インターネット上のコンテンツに取って代わりました。

特にXをはじめとするSNSでは、たとえ自分がフォローしてなくても、閲覧履歴データなどに基づいた「おすすめ」がタイムラインに流れてきます。その過程で子どもたちは、性的なコンテンツに意図せず曝露されてしまうリスクがきわめて高い。

斉藤 なかには、大人ですら眉をひそめたくなるような過激な内容の投稿もありますね。

永守 さらに懸念すべきは、「おすすめ」のなかに被害者が実在する本物の盗撮画像や動画が混ざっている点です。

斉藤 意図せぬ形で盗撮や児童ポルノ、性的ディープフェイクの消費者になってしまうわけですね。

永守 この構図は、Xだけでみられるわけではありません。たとえば、オンラインゲームの情報交換で頻繁に使われるトークアプリ「Discord」においても同様です。子どもが「ゲームの裏技を知りたい」と思って入ったDiscord内のコミュニティで、性的なコンテンツを扱うサイトへのリンクが貼られていたりするんです。

斉藤 見守りの一環として、自分の子どもがどんなアプリを利用しているか、把握している保護者は多いでしょう。けれど、トークアプリ内部での個別のやり取りやリンク先にまで、目を光らせるのは至難の業ですね。Discordはあくまでもトークアプリのひとつなので、それ自体が違法なものではないですから。こんなところにまで思わぬ危険が潜んでいるとは、言葉を失います。

永守 ちなみに斉藤先生、SNS上で取引される盗撮画像の価格帯はどの程度だと思われますか?

斉藤 数千円といったところでしょうか。

永守 私が見た限り、もっとも多く取引されている価格帯は500円です。

斉藤 そんな安価で……。

永守 500円でも10人買えば5000円、100人買えば5万円になります。大人にとっては少額でも、子どもにとってはまとまった金額です。

ネット上には、「クラスメイトの女の子を盗撮してくれたら、買い取ってあげるよ」などと、お小遣い稼ぎ感覚で子どもに盗撮行為をそそのかす大人が存在するんです。こうした取引が日々、繰り広げられています。

斉藤 子どもは大人に比べて人生経験も少なく、住んでいる世界も狭く、判断力が未熟です。そんな彼らがお小遣い欲しさから、盗撮行為に加担してしまう。これもまた強烈な負の引力ですね。

写真はイメージです
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