究極の「ステルス性暴力」
斉藤 私はあまりデジタルの分野には詳しくないのですが、クリニックにつながる加害当事者の話を聞いていても、犯行手段の進化には驚かされます。
永守 デジタル性暴力の広がりは、全国の盗撮検挙件数にも表れていると思います。2012年には約2000件だった盗撮被害が、2025年は9962件でした(第1章の図1-1参照)。撮影罪(性的姿態等撮影罪)の施行といった法整備の影響もありますが、スマートフォンの普及と技術革新が背景にあるのは間違いありません。
斉藤 クリニックのデータでも、盗撮行為の約8割がスマホで行われています。そして、スマホを使用して盗撮する加害者のうち、9割以上が無音で撮影できるアプリを使っていたことも明らかになっています。
永守 今はスマホ1台で盗撮からSNSへの投稿、マネタイズまで完結しますからね。さらにPayPayなどのキャッシュレス電子決済サービスが普及したことで、違法な売買が「ビジネス」として成立しやすくなりました。やり取りには、TelegramやSessionといった匿名性の高い通信アプリが隠れ蓑にされています。
斉藤 近年、闇バイト関連のニュースでも頻繁に耳にするアプリですね。
永守 グループチャットの招待リンクを非公開にする設定などもあり、外部からの通報や警察の捜査がますますしづらくなっているのだと思います。
斉藤 そして今、さらなる脅威となっているのが、AIを悪用した「性的ディープフェイク」です。最近は、学校内で盗撮された画像が、性的ディープフェイクに使われるのだとか。
永守 以前は、性的ディープフェイクの主なターゲットは著名人でした。しかし、ここ2、3年で一般の中高生や、時に小学生まで被害が一気に拡大しました。私たちが2025年3月から6月の間に調査したところ、未成年者を対象とした性的ディープフェイク被害は、250件以上確認できました。そのうち20件は、小学生の被害でした。
斉藤 小学生まで……。言葉を失います。
永守 本人が知らない間に、自身の画像が加工・拡散される。そして後日、心に深い傷を負わされる。性的ディープフェイクは「ステルス性暴力」だと考えています。加害者は、相手に指一本触れず、画像データさえあれば自室で、いとも簡単に性的ディープフェイク画像を作成できてしまいます。そのため、心理的ハードルはきわめて低い。たとえ子どもであっても、「気軽に」加害者になってしまうおそろしさがあります。












