若い頃に作った宿題と不義理を回収していく
──書き手と真正面からぶつかり合える編集者の存在が大きいわけですね。
編集者といえばね、この間『おでんくん』の絵本が絶版になったんです。担当編集者がギリギリまで「リリーさんが『おでんくん』の「3」を描いてくれたら絶版を止められる」って言っていたんだけど、ついに絶版になっちゃって。
今も週に1回は『おでんくん』の商品開発の話が来るし、カプセルトイが出たら当日にすぐ売り切れちゃう。昔アニメで観ていた子供たちが大人になって社会人になり、会社で企画を出してくれているんですよね。今みんなが必死にIPを探しているけれど、物語の原体験として『おでんくん』がみんなの中に残っているのは感じますね。でも肝心の原作本が読めないという……(笑)。
──『おでんくん』の「3」は描かれないんですか?
下書きはあるんですよ。10年以上前に書いていたやつで。テーマは戦争のことなんです。「ニセおでんくん」や「メカおでんくん」が出てきて、似ている者同士が言い争う話。「夢」と「愛」の次にそれを描こうとしていたんだけど、今出すとあまりに生々しく時代に乗っかっている感じがして、逆に描きづらくなっちゃったんですよね。
──「俳優にシフトした」と見られる一方で、ものを書くことや描くことに立ち返りたい思いもあるのでしょうか。
そうですね。例えば、1年の中で僕がお芝居をやっている時間って、実はすごく短いんです。部屋の片隅でイラストを描いているより、テレビや映画に出るほうがみんなに気づかれやすいから「俳優にシフトした」と思われているだけで。正直、今さらながら人前に出るのが恥ずかしくなってきたところもあるし、そろそろ本腰を入れて「ものを書くこと」に立ち帰りたいという思いはありますね。
昔、僕の原稿を必死に取ってくれた担当編集者たちがどんどん定年を迎えたり、引退したりしていて……。あの人たちが生きているうちに、ちゃんと本にして渡したいんですよね。
鶴田浩二先生じゃないけど、義理と人情を秤にかけたらどっちも重たいわけで。不義理をしたまま墓場には行けないじゃないですか。これからの仕事は、自分が若い頃に作った宿題や不義理を、一つずつ回収していく作業になっていくんだと思います。
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取材・文/キムラ 撮影/杉山慶伍
『ぐるりのこと。』
7月24日(金)よりシネマート新宿、シネスイッチ銀座、渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次公開
原作・脚本・編集・監督:橋口亮輔
出演:木村多江 リリー・フランキー 倍賞美津子 寺島進 安藤玉恵 八嶋智人 寺田農 柄本明
撮影:上野彰吾 照明:矢部一男 録音:小川武 音楽:Akeboshi
提供:中央映画貿易 配給:ビターズ・エンド ©2008 『ぐるりのこと。』プロデューサーズ
140分/ドルビーデジタル/2008年













