本当に難しいのは、人を「褒める」こと
──そうして観る側・書く側から演じる側に回ったわけですが、長年の映画批評やコラム執筆の経験は、どう影響していますか?
原稿を書いていた経験は生きていると思います。ただ、ライター時代に監督や役者さんを批判的に書くこともありましたけど、批判的な原稿を書いている時って、書き手の精神状態がすごく出るんですよね。言っちゃいけないことを言える段階に自分がいるような気がして、一番自分に出力があるかのように錯覚するのが批判なんです。
本当に難しいのは、「褒める」原稿なんです。褒める原稿って、中途半端な出力だと安易で浅薄な言葉にしかならない。全身全霊で褒めて、初めてその原稿が人の心に残るんです。悪口で盛り上がることにセンスも出力も要らない。でも、人の価値観を揺さぶるような褒め方ができるかどうかには、圧倒的なセンスが要求されると思います。
──その「センス」って、いったい何なんでしょうね……。
まず「センスって何ですかね?」って質問をしないことが大切ですよ(笑)。そして、そういう質問に答えるような人間にもならないほうがいい。オンラインサロンで金を取って、「センスとは何か今から説明しますね」なんて言って、人からなけなしの5000円をもぎ取るような詐欺師みたいになっちゃいますから。
──肝に銘じます(笑)。では、リリーさんが仕事や人と向き合う上で、大切にしている基準は何ですか?
その人がどんな仕事をしていて、どういう心理状態であろうが別に構わないけれど、やっぱり真面目な人が好きなんでしょうね。不真面目な人の愚痴を聞くのが一番時間の無駄じゃないですか。責任感のない批判的な発言に心を惑わされるなんて、本当に時間の無駄だから。
今回『ぐるりのこと。』の4K版に上白石萌歌ちゃんがコメントを寄せてくれたんだけど、萌歌ちゃんは本当にちゃんとした人間だから、初日に自分で劇場まで観に行って「お客さんちゃんと入ってました」って僕に連絡をくれたんですよ。素晴らしくないですか? そういう真面目な人と仕事をしたいですよね。













