「異物」でいることを忘れない
──この度、18年ぶりに4Kリマスター版となって公開された『ぐるりのこと。』ですが、あらためて完成版はご覧になりましたか?
リリー・フランキー(以下同) いや、実はまだ観れてないんですよ。でも橋口(亮輔)監督が「4Kになったおかげで、今までフォーカスが当たらなそうな人の細かいお芝居までちゃんと映ってる」って言っていたから、きっとスクリーンでのポテンシャルがすごく引き出されているんでしょうね。
──リリーさんの小説『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』を読んだ橋口監督から「カナオ(※『ぐるりのこと。』でリリー・フランキーが演じた役)がここにいる」と出演を依頼されたそうですね。当時、ご自身のどういう部分がカナオと重なっていると感じましたか?
あの映画で木村多江さんが演じた(カナオの妻の)翔子は、精神的にしんどくてうつ状態にあった時期の橋口さん自身の分身なんです。「こういう時にカナオみたいな人がいたらな」という、橋口さんの中で欲しかった存在が僕の役だった。
つまり、それって「逃げない人」なんでしょうね。慰めの言葉をかけるわけでも、状況を一変させられるわけでもないけれど、ただ側にいて逃げない。そうやって血を通わせずに側にいる空気を、僕の書いた本から感じ取ってくれたのかもしれない。人間関係なんて、自分のことを見捨てない人が1人でもいれば、もう100点ですから。
──現場に入って橋口監督から演技の心得として、「やってはいけないこと」と「やらなければいけないこと」を教わったそうですね。
やってはいけない芝居の雰囲気というのは、これまで映画ライターとしてたくさんの映画を観てきた中でなんとなく分かっていたんです。だからこそ僕は、ちゃんとした演技の勉強をしないままこれまで続けている。
僕の中では「あんまり勉強しちゃいけないな」と思っているんです。アマチュアリズムみたいなものがなくなったら、僕みたいな人間を使う意味がないじゃないですか。本物の俳優さんを使ったほうがいいに決まってるんだから。
自分が映画の中で「異物」であるということは、忘れないようにしたいんですよね。
──45歳でブルーリボン賞新人賞を史上最年長で受賞されて以来、映画の現場からのオファーは途切れません。
自分のことを“俳優”と呼んだことは一度もありませんが、1発目の映画(石井輝男監督『盲獣vs一寸法師』)から主役で呼んでもらったりと、とにかく映画呼ばれ運がいいんでしょうね。映画に猫可愛がりされている。どんな俳優さんよりも映画を観てきた自負はあるので、そのご褒美なのかもしれないですけど。
だからね、あなたもちょっと油断していると急に映画に出させられますよ? ライターやってて映画のことを書いていると、「映画出ないか」って声がかかったりしますから(笑)。













