西村章氏と天野慎介氏
西村章氏と天野慎介氏
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要望活動の難易度は今の方が高い

西村 高市政権下の今国会での要望活動と、 2024年に石破政権下で問題が最初に顕在化した頃の要望活動を比較して、議員や政党、官僚の感触の違いはどうですか?

天野 別世界です。というのは、2024年は高額療養費制度自体をそもそもご存じない議員さんが多くいて、そのような状態で要望をしなければなりませんでした。今は我々が議員さんたちに連絡を取れば「高額療養費の件ですね」と、こちらが話さなくても論点をある程度理解していただけるので、去年と比べるとハードルの高さは全然違います。

西村 2025年12月に示された政府案に対する要望活動では、議員数でも支持率でも圧倒的に強い高市政権を動かす難しさを感じることはありませんでしたか。

天野 2024年末に示された当初案の場合は、たくさんの様々なパズルのピースが合わさることでなんとか一時凍結をご決断いただいたのだと思います。あの当時は衆参両議院とも少数与党で、しかも夏の参議院選挙も迫っており、私たちにとって幸運なピースがいくつもありました。ところが今は、少数与党というピースが衆議院では崩れていて与党が絶対多数で、国政選挙もおそらく近々には行われないでしょう。我々にとって有利なピースがないぶん、今の要望は難易度が格段に高いですね。

だから、いかに引き上げを抑制してもらうか、あるいは制度運用上の改善で負担を少しでも下げるようにしてもらう、という要望の方向にならざるを得ない部分はあります。

西村 高市首相は関節リウマチの罹患を公言しています。そういう人がこれだけ患者側の話を聞こうとしないのはなぜだと思いますか?

天野 こればかりは、ご本人に聞かないとわからないですよね。昨年11月の衆議院予算委員会では、中島克仁前衆議院議員からの質問に対して、ご自身も高額な治療を一生続けなければならない立場であるとおっしゃったうえで、「そういう患者の方々の苦しみや悩みやその時の絶望感、そういったものはよくよく自分で分かってるつもりでございます」とお気持ちを吐露されていました。

石破首相はどうだったかと振り返ると、ご自身もがんサバイバーである酒井なつみ前衆議院議員が昨年1月の衆議院予算委員会で涙ながらに質問した際に、「一番苦しんでおられる方々の声を聞かずに、このような制度を決めていいとは思いません」と述べたことがありました。

あのとき私は傍聴席にいたのですが、あれは官僚が用意した答弁になかった言葉だったと思います。TBSの報道によると、予算委員会から官邸に戻って側近たちに「泣かれちゃったよ。制度の見直しはどうにかならないか?」と言ったそうです。その記事では、官邸の側近たちが「総理は優し過ぎる」「見直しは必要だ」などと言って、結局その方針がしばらく維持されたと報じられていました。

西村 たとえば、厚労省が保険料軽減効果の試算に受診抑制を見込んでいることは、衆議院や参議院でも野党議員からさんざん指摘されましたが、その際に高市首相は、「受診が抑制されるとは考えておりません」と答弁しているんですよね。あなたが考えるとか考えないではなくて、長瀬効果(患者の受診抑制によってマクロの医療費抑制を推計する数値)を見込んでいると厚労省が資料に記載しているじゃないですか、ということなんですけれども。

天野 高額療養費を利用する患者さんはもともと大きな病気や怪我を抱えているわけですから、その人たちの受診抑制効果を見込むということは、つまり患者さんに死ねということですか、という話になるので、これはもともとふざけた試算なんですよ。ただ、厚労省としては対財務省という立場で「機械的に計算するとこれくらい公費を削減できます」と示すためには便利なので、試算に入れているのかもしれません。

もしも厚労省に正直な印象を訊ねると、彼らも立場上は受診抑制効果があるとも言えず、かといって対財務省的にはないとも言えず、という苦しい立ち位置なのかもしれません。とはいえ、長瀬式や長瀬効果自体はふざけた話ですよ。

「受診抑制効果を見込むということは、つまり患者さんに死ねということ」患者の自己負担だけを見れば日本は世界的に恵まれているとは言い難い…高額療養費制度にまつわる政府のウソ。_2

西村 そのふざけた話にもふたつの意味があって、ひとつは高額療養費という国民の命に関わる話をしている時に、なんで厚労省は国民の方ではなくて財務省の方を向いているのか、ということがひとつ。もうひとつは、財務省に対して「国民が死ぬことを想定してでも、あなたたちは歳出を減らしたいのですね」という強烈な違和感があるわけです。

天野 その違和感は当然で、だからこそ国会では繰り返し議論になり、SNSでも何度も炎上しているんですよね。

西村 まったく、財務省は鬼畜の巣窟なのかと言いたくなりますよね。