スマホで家にいても逃げられない…いじめの“逃げ場のなさ”

これまでさまざまないじめ調査に関わってきた阿部さんだが、埼玉県内で調査に関わったいじめの事案は印象深かったという。

「女子中学生が、『殺してやる』とか性的な内容を含む写真が入った手紙を家に送りつけられるといういじめでした。手紙の内容がクラスにいないとわからない内容も書かれていて、その女子中学生は疑心暗鬼になり、友達たちとギクシャクしてしまったという相談でした。手紙は郵送なので使われそうなポストを監視したりしていましたが、一向に誰が送っているのか分かりませんでした」

だが、諦めずに調査を続ける中で、ある共通点に気づいた。手紙が送られてくるのは、その女子中学生が元交際相手と学校で会話した直後に集中していた。そこで阿部さんは、手紙が届くきっかけを確かめるため、女子中学生に特定のタイミングで元交際相手と会話してもらい、投函のタイミングを絞り込んだ。

「投函タイミングは思った通り、元彼氏との会話後でした。怪しい行動をしていたのは元彼氏の前の彼女だったのですが、手紙の投函だけはしないんです。ですが、ある時にこの子の母親がポストに投函する瞬間を目撃しました。袖で指紋がつかないようにしてポストに投函するのですが、その様子を撮影しました。さすがに母親が関わっているとは思わなかったので埼玉県警に報告して、その後、母親が逮捕されるということになりました」

ポストに投函をしていたのは、本人ではなく母親だった(写真/shutterstock)
ポストに投函をしていたのは、本人ではなく母親だった(写真/shutterstock)

文部科学省の令和6年度調査によると、小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数は76万9022件で、過去最多となった。18年前の2006年度の認知件数12万4898件と比べると約6倍だ。いじめの質や傾向に変化はあるのだろうか。

「やることはそんなに変わっていないと思います。ですが、いじめに使われるツールが変わった。僕らの子どもの時代は携帯やスマホがなかったので、ある意味、逃げ場があった部分もあります。

ですが今は、スマホに連絡が来る、または地図で居場所を共有するアプリを使われるなど家にいても逃げられなくなるんです。さらにスマホを用いて、暴力だったり性的被害だったりを撮影し、拡散されるなどもあります」

いじめそのものも複雑化してきている。これもまたスマホというツールの進化によるものだという。

「例えばいじめの標的にしたい子がいたとします。その子の名前で友達のSNSなどに悪口を書き込みするんですよ。なりすましで書き込んでいじめに発展させるのが目的です」

いじめ予防教育・キャリア教育をやった際にもらったメッセージやお手紙(左)、阿部さんの著書(右)
いじめ予防教育・キャリア教育をやった際にもらったメッセージやお手紙(左)、阿部さんの著書(右)

阿部さんのもとには、いじめの延長線上で闇バイトのような行為に関わらされる相談も寄せられているという。

「『捕まっても名前も出ないし、大したことない。将来には影響しない』などと言われ、お金目的で行く子もいますが、いじめの延長線上で無理やり行かされる子もいます。それこそ、スマホでどこそこを撮影して来いとか言われたなどという話も聞きます」