問われる身体拘束の正当性
告発人は、精神医療の問題を追及している杏林大学保健学部の長谷川利夫教授と日本医療科学大学の浅野暁子助教ら。佐々木と高橋の双方に違法な身体拘束をしていたとして、石山隆と石山哲、そして元看護師の女性を告発した。
長谷川教授らは裁判資料や病院関係者の証言を基に、女性看護師による高橋と佐々木への身体拘束が「逮捕監禁罪」に当たると指摘している。石山兄弟については、こうした違法な身体拘束を認識しながら放置していたとして、「ほう助罪」に当たると主張している。
身体拘束は、患者本人や周囲に重大な危険が及ぶおそれがある場合に限って認められる措置で、精神保健指定医が必要性を判断しなければならない。また、拘束後も継続の必要性を慎重に検討し、解除に向けた対応が求められている。
ところが告発状によると、同院ではこうした手続きが守られていなかった。女性看護師が精神保健指定医の判断を経ず、独断で患者を身体拘束してきたと指摘されている。事件当夜には、高橋がおむつ交換の際に暴れることを理由に拘束したという。
長谷川教授は刑事告発の狙いをこう語る。
「今回問いたいのは、個々の違法行為だけではありません。なぜ、患者を縛ることが、管理や懲罰、人を支配する手段として病院内で許されていたのか。被害者は抵抗する手段を奪われ、加害者は懲罰的な拘束によって追い詰められていた。犯人隠避ではなく、身体拘束が人の尊厳を奪い、命を奪う結果につながったことこそ、この事件の核心だと考えています」
今回の告発は、精神医療における身体拘束と人権と尊厳の問題を、改めて社会に問いかけている。
取材・文/窪田新之助
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