「レイシストがルールをつくってしまっている」
――代表選手のカテゴリーを義務教育期間にさかのぼってあらたに規定して分けるというこの新制度は日本だけのローカルルールで、実は発表したのが1年前でしたね。
当時は大きなハレーションも起きなかったので、協会もタカをくくっていた節がありますが、実際に選手側から声が上がって公正取引委員会に持ち込まれたことで、協会の理事長と専務理事による記者会見が4月30日に行われました。
すでに日本国籍を取得した外国出身の選手を新ルールで縛ってA2に落とすというのは、不遡及の原則(新しくできた法律や規定を、その施行前にさかのぼって適用しないという原則)に基づいて無理があるのではないかという質問も出ていました。日本国籍まで取得した選手まで過去に戻って排除するというのは、どうなのでしょう。
平尾 あの会見は自分も見ていました。弁明としては、日本国籍を持っていても関係なく、それこそが、所属協会主義に則ったものだというのですね。でもそれは詭弁でしかない。
だって所属協会主義というのは、国家という枠組みにとらわれないこと。その土地で暮らし、その土地で実際にプレーを5 年やったらもう仲間なのだから、そこの代表になれるというのが、ラグビーの世界のスタンダードで、素晴らしいところです。
海外ルーツの選手たちはラグビーだけではなく、これからも未来永劫、日本で生きていくという前向きな決意で日本国籍を取ったわけで、そこで協会所属主義だから、国籍は関係ないという弁明は、自分たちがあのルールを通すための無理からの正当化です。
所属協会主義の本質を理解した上で会見して欲しいですね。根底には、やはり日本生まれの日本人選手以外の排除だと思うのです。
――公正取引委員会に申告をしたトンガ出身の中島イシレリ選手は、コベルコ神戸で平尾さんの後輩にあたるわけですが、彼もメディアに向けて『レイシスト(差別主義者)がルールをつくってしまっている』と発言していました。
平尾 レイシストとはっきり言いましたね。彼は普段、そういう厳しい言葉を使う選手ではないので、私もあの発言には驚きましたが、それぐらいの決意を持って日本国籍も取ったという話です。
僕が個人的にとても腹を立てているのは、これだけラグビーが普及したのは、国際大会でも日本のために身体を張って戦ってくれた外国出身の彼らのおかげではないですか。その多様性のすばらしさも含めて、代表の活躍を目の当たりにした2019 年のワールドカップ日本大会から、ひとつのブームが続いてきました。
私が大学でラグビーの授業をしても学生の食いつきが明らかに良くなったんです。講義をする時にもいろんなスポーツの特質とかレギュレーションを知ることで社会を知ることになる。彼らはその意味で日本のラグビーにおける功労者ですよ。
その選手たちの梯子を外してないがしろにするのは、私は到底理解できません。今回のルールの変更決定についてもチームとは話したかもしれませんが、選手個人とは直接話していないわけで、これでは使い捨てです。批判がこれだけ飛び交うのは当然です。













