「誰かのジェンダーを間違えただけで処刑するようなAI」
2010年代のマスクは、AIが「邪悪な独裁者」になるのを防ぐために「AIを集団的にプログラミングする」プロセスを称えていた。
しかし、もし「間違った人間たち」がプログラミングをしていたとしたら、どうなってしまうだろう? もし訓練データがウォーク・マインド・ウイルスに感染していたとしたら?
ウォークで邪悪な独裁者――あるいはマスク自身の表現を借りれば、「誰かのジェンダーを間違えただけで処刑してくるような」、「全能で超抑圧的な口うるさい女教師のようなウォークAI」――が生まれてしまう可能性があるではないか。
マスクの暗い妄想では、そうした世界のAIによって排除される標的は、特定の種類の人間――すなわち彼のような人々――となる。マスクは次のように語っている。
「問題は、AIをプログラミングして、回答は多様性を重んじたものしか出してはいけないと指示すると、それがAIにとっての至上命題のようなものになり、『ふむ、権力の座にいる白人男性が多すぎるな。処刑してしまおう』とAIが考えるような状況に陥りかねない」。
Grokはウォーク・マインド・ウイルスを駆逐するために開発された
2023年3月、マスクはAI企業「xAI」を法人化した。翌月、彼はFoxニュースに出演し、タッカー・カールソンとの会話のなかで「TruthGPT」と呼ばれるものに取り組んでいると語った。それは「最大限の真実を探求するAI」になるだろうと彼は言った。
8月には、それを「Grok」に改名した。これはロバート・A・ハインラインのSF小説『異星の客』からの引用である。このチャットボットは、「他のほとんどのAIシステムに拒否されるような、きわどい質問にも答える」とされた。
それはまた、思春期の愛読書だったダグラス・アダムスの『銀河ヒッチハイク・ガイド』を明確にモデルとした、ジョークを飛ばすようなカジュアルな語り口のAIだった。そして何より重要なことに、堂々と「反ウォーク」を掲げるものだった。
それまでは、ソーシャルメディア上で反ウォーク・マインド・ウイルスを伝播させるには、人間がカウンターミームを供給する必要があった。マスクが築いたGrokは、そのプロセスを自動化できるAIなのだった。
彼はGrokを「X」に組み込み、ユーザーがタグづけして投稿すれば回答を得られるようにした。2024年12月、彼は写真のようにリアルなミームを生成できる画像生成機能を備えたGrokの新バージョンを発表。
X上では、ユーザーたちがGrokでアレンジした「カエルのペペ」のミームを拡散し始め、マスクはそれを喜んでリポストした。
そのミームは時代の変化を表すものだった。2010年代のトロールたちのマスコットであり、扇動的な4chan(アメリカ版の2ちゃんねるとも言えるインターネット掲示板)ユーザーたちによって広められ、2016年にユダヤ人組織「名誉毀損防止同盟」が指定する「ヘイトシンボル」に追加されたペペのキャラクターが大量生産できるようになったのである。













