Jリーグ全チームドクターたちから届いた500万円ものカンパ
チームメイトの思いが身に染みた。ずっと孤独だった我那覇は嬉しかったが、この動きを選手対クラブ、選手対Jリーグという構図にしてしまってはいけないと考えていた。
チームメイトを無用に引き込まないようにしよう、そのことに注意しながら自分の思いを正直に語った。選手たちに伝えるためには言葉も必要であったが、皆、何より普段の我那覇を知っていた。
「ガナさんのために俺たちでできることをしよう」
即座に藤田は動いた。
「ドクターの方々にはもちろんお世話になっていますが、あくまでも僕たちの立場では我那覇なんだと。その我那覇を取り巻くフロンターレの選手会が上げてきたというのがきっかけですね。
もちろん裁定結果がシロであることを望んでいるし、それを信じていますが、ジャッジには僕らは立ち入れない。でもその(裁定に持っていける)状況を作ってあげることはできると思うんです」
藤田が提唱した募金活動には、すべてのチームの選手会が賛同を表明してくれた。Jリーガーそして一般サポーターを対象にした募金活動がこうして始まった。
以前は事件の内実が分からず、腫れ物に触るように我那覇に接していた選手や関係者も存在したが、JPFAが公式に動いたことで、垣根は完全に取り払われた。
大宮アルディージャのドクター池田のもとには藤本主税、江角浩司らが「先生、どういうこと?」と聞きに来た。池田は穏便に、ことさらフラットに経緯を話した。それでも彼らは「分かりました。ガナは皆のために闘っているんだ」と募金への協力を惜しまなかった。
呼応するようにチームドクター連絡協議会も自分たちチームドクターの間で仲裁費用に対する寄付を募ると発表した。Jリーグ全チームドクターたちから最終的には、500万円ものカンパが集まった。単純計算をしても一人16万円以上の募金である。
「ガナ、頑張れ」という気運が、フロンターレ以外のチームのサポーターたちも包み込み、大きく広がっていった。そのうねりの源はホーム川崎、Jリーグの周囲だけにとどまらなかった。我那覇が愛してやまないところからも起こってきた。
文/木村元彦
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