KOCの準決勝でなぜ人形劇ネタが3本も

大石 実際、かなり体重乗っかってる感じします。

蓮見 よかった。それと、これまでも実体験からコントを立ち上げることがよくあって、もし元カノが僕のことネタに書いたらどうなるんだろうとか、友達と話したりしてたんですよ。あるいは、恋仲になった男女の芸人コンビが、解散したあと、それぞれピンでネタを披露したら内容が被っちゃう可能性もあるよなぁとか。

大石 たしかに、あるかもしれない(笑)。

蓮見 何年か前のキングオブコントの準決勝で、人形劇のネタをダウでやったんです。そしたらまさかの、僕ら以外に人形劇ネタが2本もあったんですよ(笑)。人形劇が流行ってたわけでも、もちろんみんなで一緒に観に行ったわけでもないのに。

その年、野球ネタが6本ぐらいあって、まあそこが被るのはわかる。けど、よりによって人形劇で被るってどういうことだよって。そういう経験を日記とかに書いてたのがたぶん頭に残ってて、そのほかの実体験もぐっちゃぐちゃに混ざって、最終的に『ロマンス』になったんだと思います。

蓮見翔(はすみ・しょう)
東京都出身。2020年に男女8人組コントユニット「ダウ90000」を結成。演劇、コントの脚本・演出を手掛ける。第70回岸田國士戯曲賞受賞作『ロマンス』の戯曲が5月18日発売予定
蓮見翔(はすみ・しょう)
東京都出身。2020年に男女8人組コントユニット「ダウ90000」を結成。演劇、コントの脚本・演出を手掛ける。第70回岸田國士戯曲賞受賞作『ロマンス』の戯曲が5月18日発売予定

大石 脚本家と漫画家が当時の日記を読ませ合うくだり、あそこも私すごく好きです。日記を見せ合うって、展開としてある種ベタじゃないですか。ベタなのに、いままでの積み重ねと、熱気で押し切られる。ベタをあんなふうに信じられるものにできてるのがすごい。

なんか作家がゾーンに入って書かれたものなんだろうなって感じました。見てるこっちもゾーンに入ってく感じがあったし。あれは、作家が体重を乗せて、本気にならないと書けないものだなって思います。

さっき、創作をする人の深いとこまでは踏み込まないようにしてるっておっしゃってましたけど、あそこは踏み込まなきゃ絶対書けない。でも、観客を置き去りにもしないのがすごい。

――あの展開は非常にエモーショナルですよね。『ロマンス』は全編にわたって、笑いや驚きが緻密にちりばめられていますが、日記を読ませ合うあの場面はとにかくふたりとも必死で、お互いどうにかして想いを伝えようとする姿に胸が熱くなります。

蓮見 ダウのお客さんは基本お笑い好きな人がほとんどなので、彼らに助けてもらってますよね。もし演劇ファンだけが集まる環境だったら、あんな熱いシーンをやるのはやっぱり怖いですよ。

でも、2時間くらいの長尺の作品だったら、一度くらい熱くなる瞬間が訪れないとそれはそれで不自然だよなって気もするので。あとはほら、賞を獲りたかったから、要素として熱さも入れといたほうがいいかなって(笑)。

大石 じゃあ、熱さを使ったっていう感じなんですか?

蓮見 う~ん。結果的に、上原(佑太/脚本家・坂谷役)と忽那(文香/漫画家・大八木役)のキャラや演技もあいまって、思ってたのとは違う熱さになったって感じですかね。

大石 偶然だとしても、あれだけ説得力のある熱さを持たせられる人はなかなかいないんじゃないですかね。これからも熱いの書いてほしいなって、無責任だけど思いました。

蓮見 嬉しいなあ。自分でもあそこまで行けるとは思ってなかったので、次また同じようなことができるかわかんないですけどね。