「金太郎、なし遂げる。」(集英社文庫・コミック版3巻収録)
「サラリーマン病」とはいったいなにか?
『サラリーマン金太郎』第32話には、まるで時代を先読みしていたかのようなシーンがある。
トンネル工事で落盤寸前の事故が起き、金太郎が泥だらけになりながら陣頭指揮をとって作業員たちを救出する。現場は熱気に包まれ、トンネルも無事に掘り抜かれる。
まさに“金太郎らしい”熱い展開だ。そんな金太郎の姿を見ながら、ヤマト建設の役員・神永が所長に向かって、突然社会論を語り出す。
「今、日本は病気にかかっている気がしませんか?」
「サラリーマン病ですよ」
神永の説明によると、サラリーマンとは単なる会社員のことではない。組織の中に個人を埋没させ、集団という隠れ蓑の中に隠れ、なるべく個人として責任を取らないように振る舞う存在だという。
弱気に、周囲との協調ばかりを優先し、社会の常識から外れないよう、マイナスポイントを持たないように生きる。さらに神永は、テレビの世界を引き合いに出す。テレビでは、社会からはみ出した人間を材料に、集団で叩くような娯楽が広がっている、と。
そして政治家や役人、マスコミまで含めて、みんなが「個人として責任を取りたがらない」。それがサラリーマン病だ、と神永は言い切った。
言っておきたいが、この漫画が描かれたのは1990年代。にもかかわらず、今読んでもあまりにも思い当たることが多い。30年前の漫画なのに未来を言い当てているのか、それとも日本社会が30年前から変わっていないのか――そんなことまで考えてしまう。
もっとも、このシーンが面白いのは、ただ社会を批判するだけで終わらないところだ。神永がこの話をする前に、読者はすでに“サラリーマン病とは真逆の男”を見ている。
落盤寸前のトンネルで、金太郎は先頭に立って叫ぶ。
「一人でも死ぬようなことがあったら、俺は死ぬぞ!」
責任から逃げることが当たり前になりがちな社会の中で、真正面から責任を背負おうとする男。この時代でも、そして現代でも、「サラリーマン病」にかからない男が金太郎だ。
その姿を、ぜひ第32話で見てほしい。























