周囲に研究意識を熱く説いていた「あまりのことで信じられません」

逮捕された江渡容疑者は、日本初の本格的なオンライン大学であるZEN大学の教授を務めていた。だが、単なる大学教授ではない。「デジタル技術とアートの融合」における日本屈指の権威であり、いわば「インターネット文化と学問の橋渡し役」として、実績を積み上げてきたエリート中のエリートだ。

1990年代には、デジタルアート界のノーベル賞とも称される「アルス・エレクトロニカ」で数々の賞を受賞。国を代表する研究機関である「産業技術総合研究所(産総研)」に所属し、専門家だけでなく一般市民も科学に参加できる「ニコニコ学会β」を委員長として立ち上げるなど、常に時代の最先端を走り続けてきた。

15年前の江渡容疑者(撮影/集英社オンライン)
15年前の江渡容疑者(撮影/集英社オンライン)

江渡容疑者の「表の顔」を知る知人は、今回の事件に言葉を失っている。

「彼は、いわば日本の科学技術界の『スター』でした。2017年には文部科学大臣から表彰を受けていますし、昨年開催された大阪・関西万博にも、量子力学をテーマにした巨大プロジェクトを出展している。名実ともに日本を代表する顔だったんです。

常々、研究や教育の場で『共創(きょうそう)』という言葉を大切にしていました。『ただ誰かが作ったものを使う(ユーザー参加)のではなく、遊び場そのものをみんなで土台から作り上げること(共創)こそが重要なんだ』と。

そしてシステム作りでも教育でも、『一番大事なのは、本人の意識をどこに置くかだ』と熱っぽく語っていました。あまりのことで信じられません」

万博での自撮り写真もSNSに多数掲載(写真/本人SNSより)
万博での自撮り写真もSNSに多数掲載(写真/本人SNSより)

日頃から学生たちに「一番大事なのは、本人の意識をどこに置くかだ」「志を高く持て」と説いていた江渡容疑者。日本のAI研究を牽引し、人工知能学会の理事という重職にも就き、大学での教育や学会運営に携わっていた人物が、SNSを通じて少女と個人的な接触を持っていたという事実に、捜査当局も困惑を隠さない。

「被疑者の男については、本人は『大学教授』なんて言っているけど、ネットで調べると色々出てくるね。メディアアート? アートサイエンス? 詳しくないから私らにはよく分からんけど、万博の美術品がどうのこうのとホームページにはもっともらしいことが書いてあって、多岐に頑張って活動していたんだなとは思っている」(捜査関係者)