Netflix独占配信に「複雑な気持ち…」
この問いに対して菊池投手は「難しい質問が来ましたけれども……」と苦笑しながらこう答えてくれた。
「正直、複雑な気持ちではありますよね。やっぱりひとりでも多くの方々に見ていただけるチャンスですから、複雑な気持ちではありますが、ただ、そのなかで我々がやることは変わらないですし、とにかく僕らは全力で投げる、プレーするだけだと思ってます」
明言は避けたが、残念な気持ちは少なからずあるのだろう。WBCが地上波で中継されれば、野球人口に好影響をもたらせるのは間違いないからだ。菊池投手は続ける。
「野球人口減少の危機感は、たぶん野球をやっているすべての選手が持っていること。ただそれはひとつのソリューションではなく、お弁当作りや当番制で保護者が大変とか指導者の問題とかいろいろあって、いろんなディスカッションをしていく必要があると思います」
今回のWBCについても、その問題のひとつではないだろうか。WBCの視聴が限定的になり野球へのタッチポイントが減ることで、貴重な野球振興の機会を奪う面もあるはず。加えて、野球居酒屋やスポーツバーなどでのパブリックビューイングについても、地上波中継にはない障害が生まれている。
東京・神田にあるベースボール居酒屋「リリーズ神田スタジアム」では、店内でWBCの中継映像を流すのは諦めたという。
「昨年から店内で映像を流せるように商業利用のライセンスをつくる予定があるかをNetflixさんに問い合わせていましたが、2月に入ってから回答がきて、商用利用は一切NGということでした。
今までのWBCや日本シリーズで映像を流せなかったことはないので残念ですが、Netflixさんも商売なので仕方がないですね。次の大会では日本のメディアが放映権を買い負けないようにがんばってほしいです」(リリーズ神田スタジアム店主・高橋雅光さん)
Netflixは選手の出身地の自治体、出身校などと共同でパブリックビューイングを行なう予定としているが、開催場所は全国30カ所と、やはりこれも限定的だ。
「見たかったら金を払えばいい。月額890円を渋るのは野球がそこまで好きじゃないだけ」
という意見もネットでは散見される。確かにそうだ。大した金額ではないのだから見たければお金を払えばいい。しかし、WBCのような国際試合は“お金を払ってまで見ない層”に興味を持ってもらう絶好の機会であることもまた事実。
それは現在開催中のミラノ・コルティナ冬季五輪でも同じことが言える。
そして、多くの人とともに喜びや悔しさを共有することが国際試合の醍醐味だ。野球ファンだけが見たのであれば、その感動も一体感も薄らいでしまう。
長期的に見て、それは野球界のためになるのだろうか。Netflixの独占配信によって日本戦以外の試合が見られるというメリットはあるが果たして……。Netflixがある意味、今後の球界の命運を握っているといっても過言ではない。
取材・文/武松佑季














