地元で忌み嫌われる「広島焼き」という呼称
お好み焼き界におけるひときわプレミアムな存在、それが「広島焼き」……。そう信じて疑わなかった僕ですが、つい10年ほど前に、衝撃の事実を知りました。
広島焼きを広島焼きと呼んではいけないらしいのです。もう少し正確に言うと、ご当地広島においてそれは単に「お好み焼き」と呼ばれており、「広島焼き」という呼称は広島県民を怒らせてしまう、というのです。
正直、何が何だかわかりませんでした。何がって「怒る理由」がです。
僕は、本場広島で目の前の巨大な鉄板から直にお好み焼きを食べた時のことなどを思い出し、なるべく広島県民の気持ちになって、想像をめぐらせてみました。
我が街が育んだこのお好み焼きは、とてもおいしい料理に進化した。なので他県の人々からは「広島焼き」という固有名を与えられた。しかし自分たちにとってこれは極めて身近な存在であり、よその人から見たら特別なそれを、単に「お好み焼き」と呼んでいる。それを「広島焼き」と呼ばれるのは……あれ? むしろ誇らしいぞ……。
僕は鹿児島出身ですが、鹿児島で「つけ揚げ」と呼ばれている名物は、全国的には「さつま揚げ」と呼ばれています。構造としては広島焼きとパラレルですが、少なくともそれで怒っている人は多分いません。僕はますますわからなくなってきました。
長年これは僕にとって謎のままだったのですが、ある時業を煮やして、SNSで尋ねてみました。
煽るつもりでもなんでもないと言葉を尽くし、「広島焼きの何が嫌なんですか?」と。瞬く間に色々な意見を頂戴しました。もちろん中には広島県民の方も多くいらっしゃいました。その時もやはり明確な答えは得られなかったのですが、大筋としては「大阪に対する対抗意識なのではないか」ということのようでした。(ちなみにこの名称が戦火をイメージさせるのも忌避される理由という話も聞いたことがありますが、この時の方々は、それは少し牽強付会なのではと言う方がほとんどでした。)
つまり、
「お好み焼きの本場は広島と言いたいところだが、確かに大阪ももうひとつの本場であることは認めざるを得ないであろう。しかし大阪のお好み焼きが全国で単に“お好み焼き”としか呼ばれていない中で、広島のそれが別の名前で呼ばれるのは、大阪こそが本流で広島は傍流であるかのごとく扱われているようで、極めて遺憾である」
ということです。
そう言われてみると確かに、と思う部分もあったのですが、同時にそこには少し誤解もあるような気がしました。というのもそもそも、大阪も広島も、決して「お好み焼きの本場」とは言えないからです。













