究極のやわうどん体験

牧のうどんの麵は、少なくとも僕が知る限り、福岡で最も太くて柔らかいです。全国的に見ても、三重県の伊勢うどんに匹敵するトップクラスの柔らかさなのではないでしょうか。

あまりに柔らかくてふわふわなので、その麵は、つゆをあっという間に吸い込んで、ますます柔らかくなります。気が付けば、つゆはいつの間にかなくなっているのです。

なので牧のうどんでは、小さなヤカンに入ったつゆが別途添えられます。つゆがうどんに吸い込まれてしまったら、そのヤカンのつゆを適宜足してください、というわけですね。

牧のうどんに実際行ったことがない人は、おそらくその状況を想像することすら困難だと思います。……百聞は一見に如かず。

牧のうどん(写真/PhotoAC)
牧のうどん(写真/PhotoAC)

読者の皆様には(その中には「うどんはコシ」派も大勢いらっしゃるとは思いますが)(ぜひ一度、騙されたと思って)、この究極のやわうどんを体験してみていただきたいと願います。

数年前の二泊三日の福岡旅行で、僕は二日続けて牧のうどんを訪れました。その次の訪問時に至っては、仕事の移動中の一泊二日の滞在だったにもかかわらず、3回しかなかった食事の機会のうち、なんと2回を牧のうどんに捧げてしまいました。

前節で僕は「強いて日本一のうどんを決めるなら」というテーマにおいて、「京都のきつねうどん」を挙げました。その上であえて2位を指定するならば、「牧のうどんの肉うどん」を挙げるでしょう。

いや、2位と言うよりは、むしろ互角かもしれません。

写真はイメージです(写真/PhotoAC)
写真はイメージです(写真/PhotoAC)
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ちなみに牧のうどんの肉うどんを最高においしく食べるために、僕は僕なりのちょっとしたコツを確立しています。

それについても語っておきたいのは山々ではあるのですが、それは単に、限界オタクによる少々気持ち悪い「推し語り」になってしまいそうです。なのでいったんやめておきましょう。

文/稲田俊輔

東西の味
稲田俊輔
東西の味
2026年1月26日発売
1,870円(税込)
四六判/240ページ
ISBN: 978-4-08-788140-0

分け入っても分け入ってもうまい味!
博覧強記の料理人・イナダシュンスケが、うどん・蕎麦・餃子・から揚げ・ラーメン・すき焼き・お好み焼きなどの王道人気メニューから、日本の味の「東西差」を考えるエッセイ。

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