「そこそこの支持率でも負けた」ケース

そして、記憶に新しい2024年の選挙だ。これは「そこそこの支持率でも負けた」ケースとして、日本の政治史に刻まれた。

支持率は41%。2017年よりも高い数字だ。しかし、結果は215議席。過半数を割り込み、大きく勢力を後退させた。

24年の衆院選では、埼玉14区から立候補した公明党の石井啓一代表が落選する事態に
24年の衆院選では、埼玉14区から立候補した公明党の石井啓一代表が落選する事態に

何が起きたのか。「無党派層の離反」が起き、さらに野党側での候補者調整がある程度機能したことで、接戦区を次々と落としたことが要因と考えられる。

2024年は、「支持率はそこまで低くない(歴代最低ではない)のに、議席を大きく減らした」という点で、従来の「低支持率でも選挙制度で勝てる」というセオリーが通じなかった特異な例と言える。有権者は、惰性で与党に入れることをやめ、批判票を投じる受け皿を見つけたのだ。

ここで改めて、衆院選の勝敗を分ける「仕組み」について、少し丁寧に触れておきたい。なぜなら、この仕組みこそが、300議席という数字を生み出す源泉であり、同時に政権を転落させる落とし穴でもあるからだ。

なぜ300議席という数字なのか

衆議院選挙の主戦場は、小選挙区だ。一つの選挙区から、一人の当選者しか出ない。
これは、学校のクラスで委員長を決める選挙に似ているかもしれない。

A君、Bさん、C君が立候補したとする。クラス40人のうち、A君が15票、Bさんが13票、C君が12票を取ったとする。A君は当選だ。

しかし、よく見れば25人の生徒はA君以外に入れている。クラスの過半数はA君を選んでいないのに、A君がクラスの「総意」として選ばれる。これが小選挙区制の特徴だ。

この仕組みは、第一党に有利に働く。ほんのわずかでも相手より多くの票を集めれば、その地域の議席を「総取り」できるからだ。オセロゲームで、隅の石を一つ置くだけで、列の色が一気に変わる様子を想像してほしい。

全国289の小選挙区で、僅差の勝利を積み重ねれば、全体の議席数は爆発的に増える。逆に、僅差で負け続ければ、雪崩のように議席を失う。

「支持率62%」という高市内閣の数字は、このオセロゲームにおいて、非常に強力な武器となる。単純計算すれば、接戦区の多くを制し、300議席を伺う勢いがあるように見える。