「希望の煙突の巻」(ジャンプ・コミックス第141巻収録)
今回は、発電所の食堂で働きながら歌手への道を模索する「紅月灯(あかつき・りん)と少年時代の両さんとのふれあいを描いている。
どこか初期『こち亀』の描線を思わせる骨太なタッチ、高度成長期真っただ中の変わりゆく日本、夢をかなえるべく上京したものの食堂で休みなく働く若い女性……。本作は勘吉少年と歌手志望の若きマドンナとの交流を描きつつも、昭和の時代感を色濃く感じられる。
舞台になっている千住火力発電所は、1926年から1963年にかけて東京都足立区にあった東京電力の発電施設。その燃料は、石油や液化天然ガスが主になる以前の化石燃料・石炭だ。高層建築物がまだまだ少なかった時代ゆえ、発電所の4本の煙突は下町のランドマークとして知られており、眺める角度によって煙突の本数が違って見えることから「おばけ煙突」と称されていた。
『こち亀』でおばけ煙突……といえば、よく知られているのは「おばけ煙突が消えた日の巻」(ジャンプ・コミックス第59巻収録)。少年時代の両さんと美しい臨時教師とのつかの間の出会いと別れを描いたお話で、人気の高い名作だ。こちらもぜひ一読をおすすめする。
なお、作者の秋本治先生にとって紅月灯と彼女の故郷・端島(長崎県の軍艦島)は創作意欲をかき立てられるものだったと見え、のちに以下のような2編を描いている。
『こち亀』の名を冠さない異色の続編
みごと歌手デビューが決まった灯を主人公に据え、故郷・軍艦島の寂れゆく炭鉱とそこで働く家族、住人たちへの思い出をまじえて描かれた中編。
「希望の煙突 ─端島─」(「ジャンプNEXT! 2013WINTER」掲載)
両さんと灯が同級生に? 端島を舞台にした夏のパラレルストーリー
勘吉少年が悪友の珍吉、豚平とともに、クラスの美少女・灯の故郷である端島を訪れてすごすひとときを描いた。
「希望の煙突『夏』─1963─ 勘吉たちの夏休み」(「週刊少年ジャンプ」2023年323号掲載)
これらのお話はコミック未収録だが、今年は『こち亀』50周年の記念イヤーだ。ぜひともこの2編を誰もが読めるようにしてもらいたい。
それでは次のページから、歌手をめざす女性をゲストに送る、両さんの少年期のお話をお楽しみください!!



















