民泊投資家にとっての「聖地」と化していた池袋
もっとも、今回の見直しは豊島区が招いた自業自得の面がある。民泊が導入された2018年、新宿区や渋谷区など、都心ターミナル駅に近い場所ではエリアによって厳しく制限していた。
しかし、豊島区はこうした規制を導入せず、経済効果があると数年間にわたり放置していた。特に池袋北部は築古の物件が多いことから物件の取得単価が低く、高利回りが見込めるとして、民泊投資家にとっての「聖地」と化していた。投資家が木造アパートや一軒家を買い漁り、民泊用にコンバージョンする例も相次いだ。
もっとも、今回の規制導入は民泊事業者に冷水を浴びせた形になる。池袋駅周辺で営業している地場の不動産仲介業者に話を聞くと、「前は投資目的で問い合わせる例もあったが、民泊規制の話が出たあたりから急減した」という。
こうなると投資家側は苦しくなる。一般的に、民泊の表面利回りは10%程度と言われている。インバウンドの急増で宿泊費が急騰した時期は20%の物件も珍しくなかったが、それを期待してローンを組んで物件を購入したものの、突然の「後出しジャンケン」により利回りの急落が確定したのだ。
はやくも撤退戦の様相…民泊事業者は「招かれざる客」
投資家向けの不動産ポータルサイトには民泊用物件が次々と掲載されるなど、はやくも撤退戦の様相を呈している。
民泊規制に手を付けたのは豊島区だけではない。
江戸川区や北区、墨田区などこれまで規制がなかったエリアでも営業可能エリアや期間などを制限する条例の制定に向け議論が進んでいる。
新宿区では業務停止命令を受けながら営業を続けたり、行政への報告義務を繰り返し怠ったりした悪質な4事業者11施設に「廃止命令」も出た。
これまで、東京はホテルが足りないと言われてきたが、足元のインバウンド急増を受け、ホテル事業者だけでなく不動産デベロッパーから投資ファンド、異業種からの参入も含め、様々な企業が参入。ホテルの建設ラッシュが始まっている。
従来であればマンションが建つような立地の土地でもホテルに転用されるケースもあり、供給不足は解消されつつある。これまで、ホテル不足を補ったり宿泊料金の高騰を抑えたりする調整弁としての機能を期待されてきた民泊だが、ここにきて負の側面の方が大きくなり、行政側にとっても民泊事業者は「招かれざる客」となりつつあるのだ。













