「アニメ現代事情の巻」(ジャンプ・コミックス第91巻)
今回は、貴重なセル画コレクションをきっかけにした、両さんの悪巧み&騒動をお届けする。
セル画とは、鉛筆で紙に描いた線画(動きのポイントを描いた原画と、その間の動きを描いた動画がある)を、透明なシートにカーボンで熱転写し、専用の絵の具で色を塗ったものを指す。名称の由来は、材料が「セルロイド」だったためだ。セルロイドは可燃性が高いため後に別の素材に置き換えられたが、通称は「セル画」のままなのだ。
セルロイドはニトロセルロース(硝化綿)と樟脳を主原料とする合成樹脂で、世界初のプラスチックだ。初期の撮影用フィルムやさまざまな工業製品に使用されたが、とにかく燃えやすく、1950年代頃からは代替材が使われるようになった。
『こち亀』においては、セル製品工場を家業としていた両さんの美少女同級生が、家が火事を起こして引っ越すお話を描いた「勘吉青春恋語り」(ジャンプ・コミックス999巻 13誌出張版)なんていう作品もある。
さて、セル画の話に戻ろう。アニメは、一枚の絵がモーフィングして変化していくわけではなく、少しずつ違った絵を描き、連続して撮影・再生することで動きを表現している。そのため、30分枠のテレビアニメ一話でも数千枚の原画&動画、そしてセル画が必要になるのだ。映画作品になると、その枚数は数万枚に達する。
本来なら使用後に産業廃棄物になるこれらは、マニアの間では貴重なアイテムとなる。ふたつと同じものがないだけに、描かれているキャラクターやシーンによって、大きくその価値は異なるのだ。
ただし経年変化によるカーボンの分解が起き、セル画上の「線」は時間とともに薄れ、消えていくことが避けられない。温度や湿度を一定にして光を当てない……などして分解の進行を遅らせることはできるが、いずれは消えゆく絵なのだ。絵そのものを残すには、物理的なセル画の保存だけではなく、早急な撮影、スキャンが必要だ。
なお、セル画をフィルムで撮影してのアニメ制作は、1990年代後半から減少し、2000年代なかばにはほぼ皆無に。最後のフィルム撮影テレビアニメだった『サザエさん』がデジタル制作に移行してから、すでに10数年が経過している。
つまりセル画とは、20世紀のアニメ制作が残した遺産であり、記録なのだ。近年、セル画の海外流出が注目されているが、いささかの寂しさを覚えざるをえない。
それでは次のページから、セル画をめぐる悪巧みの顛末をお楽しみください!!



















