粗品の辛口審査はお客さんへのダメ出しにも発展
たとえば、そのパンツ万博に対しても「メインの根幹がウケへんかったときに、“保険”の細かいやり取りを用意しとかなあかん。(略)『エレベーターの中で犬と一緒になる』っていう設定は皆さんおっしゃる通り良いので、そんな中で、じゃあ、非常ボタンもあるし、階のボタンもあるし、棺桶運ぶ時に空けるスペースも余ってるわ、乗り合わせたUberの配達員とか大家さんとか山ほどあるから。そういうのを、散りばめないといけなかった」などと極めて具体的に改善策を提示。
その上で「ボケの子はクールで良いし、ツッコミの子のツッコミかたも何か形になりそうな、何か掴めそうなところある」とエールを送っている。
その姿勢は、他の芸人たちへも一貫していた。粗品のコメントは厳しい面もたぶんにあったが、むしろ、より面白くなってほしいという、芸人に対する優しさに溢れ出ていた。
もちろん、だからといって粗品の言っていることが、すべて“正解”というわけではないだろう。
しきりに粗品は「日テレが集めた今日の客の勘が悪すぎて」「おもんない客」などと観客を腐していたが、(少なくてもテレビで活躍したい)芸人が笑わせたい相手は、粗品が腐しているような層ではないか。大多数の人たちは、お笑いを専門的に見ているわけではない。
いろいろな笑いの価値観や正義があっていい。だからこそ、粗品だけではなく、複数の審査員がいるのだ(粗品のそれに隠れて、友近の「こっちがおもしろいとこを探そう、探そうって一生懸命になることなく、おもしろいものを提供してくださった」というのは、何気にかなり鋭利なコメントだったが)。
冒頭の発言をしたエルフ荒川も、自分のネタに対する講評に対しては、肯きながら聞いていたが、粗品が「普段、質の悪い客の前でしかネタ試せてないから」と自分たちのファンを悪く言われた瞬間に表情が変わった。
おそらく、それに対して直接反論すると笑えないから、「出て行って」という端的でわかりやすい言葉を瞬時に選んで笑いを生んだのだ。テレビでのキャリアの為せる業だろう。お互いの信念が真摯にぶつかりあった名シーンだった。



















