40歳で出会った“最高の相棒”

3回目の結婚は、山ちゃんが40歳のときに突然やってきた。お相手は、行きつけの喫茶店に友人が連れてきた女性だった。「小さいけど明るくてニコニコしてて面白い奴なんだ」といい、気づけば「3人目の結婚相手はこういう子がいいな」と、心はすっかり持っていかれていた。

勢いのまま、すぐに交際が始まり、半年もしないうちに駒込で同棲がスタート。ほぼ結婚を前提としたような関係性だった。ところがある日、2人が通うスナックのママから突然の説教が飛んだ。「籍を入れてくれないって奥さんが愚痴ってたよ。山ちゃん籍入れてないの?」

「一緒に住んでんだし、関係ねーだろ」と思っていた山ちゃんだったが、「女性ってそういうもんじゃないのよ」とママから一喝され、「わかったよ~」と観念してそのまま入籍。結果、同棲開始から1年以内で3回目のゴールインとなった。

果たして3回目の結婚生活はどうだったのか。

「3人目が一番面白かったね。飲みにいくと焼酎をがぶ飲みして、その飲みっぷりが最高なんだよ。恋愛とか夫婦っていうより、友達の延長みたいな関係でさ。こいつが男だったら絶対大親友だったなって感じ。一緒にいて楽だし、よく2人で飲み歩いてたよ」

そんな“最高の相棒”とは、なぜ離れ離れになってしまったのか。

「10年前にくも膜下出血で亡くなった。大塚で飲んでたら電話がきて、搬送先の病院に急いで駆け込んだけどダメだったな…」

それまで豪快に喋っていた山ちゃんの声が、少し沈む。その淋しげな表情に胸を突かれながら、どうしても確認したかったことがある。

「それって…離婚じゃなくて死別ですよね。つまり山ちゃん、バツ2じゃないですか?」

すると山ちゃんは、目を丸くして一言。

「えっ俺ってバツ2なの? あ~そっか…ごめんごめん!」

バツ3以上の男女の人生を聞く本連載『多婚さんいらっしゃい!』において、まさかの自己申告ミスに記者は動揺を隠せなかった。しかし取材も終盤…最後の質問として「恋愛も夫婦も賞味期限は10年」と語っていた山ちゃんが、なぜ3回目の結婚生活は35年続いたのか。その理由を尋ねてみると、

「一緒にいて疲れなかったし、喧嘩もほとんどなくてずっと円満だった。2人目までは向こうからアタックされたけど、3人目は俺が惚れたんだよ。最後に一番いい人に行き着いたな」

としみじみ語ってくれた。3周して、ついにたどり着いた“本物の伴侶”。山ちゃんの破天荒人生にも素敵なロマンスがあったのだ。

※「集英社オンライン」では、本連載『多婚さんいらっしゃい!』の取材対象者を募集しています。取材に応じていただけるバツ3以上の離婚歴のある方やお知り合いがいる場合、下記のメールアドレスかX(旧Twitter)までご連絡ください。(※お送りいただいた個人情報は本企画遂行のために使用し、プライバシー保護を厳守します)

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3回目の結婚で“最高の相棒”と出会えた山ちゃん
3回目の結婚で“最高の相棒”と出会えた山ちゃん

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部特集班