妹を置いて自分だけ助かろうしなかった11歳の米国少年
子供たちが遊びに出かけた直後だった。バーデン少年は、数メートル先に黒い塊を見つける。クマだ。それは好奇心と食欲に満ちた目で、彼らを見ていた。近くには7歳の妹、モリアがいた。
この時、バーデンが取った行動こそが、全ての日本人が脳裏に刻むべき「生存の極意」である。
彼は逃げなかった。妹を置いて自分だけ助かろうとはしなかった。 「クマだ!」 少年は腹の底から叫び、両手を激しく振った。あえてクマの注意を自分に向けさせたのだ。妹のモリアは恐怖で凍りつき、動けなくなっていた。逃げろという指示も耳に入らない。
バーデンは、躊躇なく妹のもとへ駆け寄った。そして彼女を抱きかかえると、全力で走り出した。クマはその背中を追いかけた。距離はわずか3メートル。獣の荒い息遣いが聞こえる距離だ。
絶体絶命の状況下で、バーデンは諦めなかった。彼は妹を守る盾となりながら、再びクマに向かって咆哮し、威嚇し続けた。一部の報道によれば、彼は石を投げつけるほどの抵抗を見せたとも伝えられる。
弱者を守るために、恐怖をねじ伏せて戦った
11歳の少年の気迫、「絶対に妹を食わせない」という殺気にも似た決意。それに呼応するように兄や他のキャンパーも加勢し、大声で叫んだ。
多勢による威嚇と、獲物だと思っていた少年の予期せぬ反撃に、クマはパニックを起こした。捕食者としての優位性を崩されたクマは、方向転換して逃げ去った。
少年の行動は、単なる美談ではない。彼は「弱者を守るために、恐怖をねじ伏せて戦った」のだ。妹のモリアは後に語っている。「バーデンと兄が、私の命を救ってくれた」。
イオンの従業員と、バーデン少年。彼らに共通するのは「能動的な対抗」である。彼らは、運命を獣の気まぐれに委ねなかった。こうした逸話は、日本の教科書にしっかり載せるべきだろう。
翻って、日本の現状はどうだ。 行政やメディアが繰り返すのは、「刺激するな」「死んだふりをしろ」「背中を見せるな」という、カビの生えた念仏ばかりだ。
これらの「常識」を、私はここに粉砕し、破壊したいと思う。
ショッピングモールの家具売り場で、どうやって刺激せずに立ち去るというのか。3メートル後ろから迫るクマに、死んだふりが通用すると思うのか。これらは「遠くでクマを見かけた時」の牧歌的なマニュアルであって、「襲われている時」の戦術ではない。













