旅行会社「11月末から12月末まですべてキャンセルになりました」

そして14日、中国外務省は「日本の指導者による台湾を巡る露骨な挑発的発言は、中日交流の雰囲気を著しく悪化させ、日本にいる中国人の安全に重大なリスクをもたらしている」として日本への渡航を控えるよう国民に警告。するとその“影響”はすぐに現れた。

日本でインバウンド向けツアーを組む旅行会社の中国人社長がこう悲鳴を上げる。

「先週土曜(15日)に中国側のエージェント(旅行会社)からツアーが中止になるかもと言われ、今は11月末から12月末まですべてキャンセルになりました。それだけで計700万円近くの損失ですが、すでにハイシーズンの1~2月のキャンセルも相次いでいて、そうなると営業ができなくなる可能性も出てきます。

お客さんには『日本は安全だから政府が言うような危険地帯になっていない』と説得していますが誰一人聞く耳を持ってくれません」(旅行会社社長)

11月18日の秋葉原、普段より中国人観光客の数が少なかった(撮影/集英社オンライン)
11月18日の秋葉原、普段より中国人観光客の数が少なかった(撮影/集英社オンライン)

同業の日本人経営者は「自粛要請は12月末までの期限付きで、ハイシーズンまで長引かせるとは思わないため、それまでの我慢という形で認識しています」と話し、早期の要請解除を切望する。

だが中国は観光客だけでなく留学生の日本渡航も牽制している。日本政府は18日に外務省の金井正彰アジア大洋州局長を北京へ急きょ派遣し収拾を図ったが、中国外交部の局長は会談後「(会談に)当然満足していない」と述べ、高市首相発言の撤回なしには矛を収めない姿勢を示唆した。

「今後中国が、日本人のビザなし渡航も取り消すのではないかとの心配が出ています。さらに、レアアースや農産物の対日輸出や、解禁したばかりの日本からの水産物の輸入などに制限をかけてくることも考えられます。

その場合、米国のトランプ関税に対して“自由貿易”を標ぼうしてきた手前、規制を公然化させず、輸出量を徐々に絞ったり“検査”の名目で輸入品の通関を遅らせたりする“ステルス”手法を使う可能性もあります」(外報部記者)

2024年に福島の小名浜漁港を取材した際の海産物(撮影/Soichiro Koriyama)
2024年に福島の小名浜漁港を取材した際の海産物(撮影/Soichiro Koriyama)