「次に襲われるのは自分かもしれない」

ダイくんは、Aさんの父親が知人から引き取ってきた。Aさんは当時東京で勤務しており、帰省するたびにダイくんを可愛がっていたと言う。

「10年前にこっちに戻ってきて、そこから365日、毎日ダイの散歩をしていた。ハチャメチャな性格で、17歳なのに庭を駆け回って一人でも元気に遊んでいた。とにかく動き回ることが大好きで、近くに行くと『遊ぼうよ』『いつ散歩行くの』と甘えてきていた。朝散歩に行ったばかりなのにですよ。

もう歳だし、いつポックリいってもおかしくないけど、そんな衰えを感じさせないほど元気な犬でした。トイレは小屋を自分で出てちゃんと外でするし、賢い子でもありました」

ダイくんを襲ったクマの行方はいまだ不明だ。Aさんは、「相手は動物ですけど、やっぱり許せない気持ちはある。ダイを返せ。クマが憎いです」と憤りを隠せない。

自宅敷地内の庭で見つかったクマのフン(撮影/集英社オンライン)
自宅敷地内の庭で見つかったクマのフン(撮影/集英社オンライン)

そのいっぽうで恐怖心もあると明かす。

「次に襲われるのは自分かもしれないし、恐怖でいっぱいです。外に出るときがとにかく怖く、熊鈴や爆竹などを持っていますが、それも効果がない場合もあると聞く。ここまでクマが人里に来るのは初めてですよ。

もともとここら辺ではクマ除けのために犬を飼っている家も多い。クマはもうそろそろ冬眠間近ですが、よっぽどお腹を空かしていたのではないでしょうか。数年前から、チワワも1匹飼っていますが、チワワはまだダイがいなくなったことを認識していない。寂しいですよね本当に……。相棒だったのに……」

ダイくんは数日後、火葬され、骨は骨壺に入れられて家の仏壇に置かれているという。

秋田県でクマが犬を襲ったのは、今年度でダイくんが初めての事例だ。ただ、11日の午前11時ごろ、秋田市内では70代女性が飼っていた柴犬(4歳・メス)がクマに連れ去られたと110番通報があった。

秋田東署の発表では、70代女性が飼い犬の鳴き声を聞いて外を見ると、体長約1.2メートルのクマが犬小屋を引きずっていたという。

人だけでなく、大切なペットも襲うクマ。さらなる対策が必要だ。

ダイくんの犬小屋(撮影/集英社オンライン)
ダイくんの犬小屋(撮影/集英社オンライン)
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班