「リフィル処方箋」の活用と「ポリファーマシー」の警鐘

記事後半で展開されている「リフィル処方箋」の活用や「ポリファーマシー」の警鐘についても、少し言及しておこう。

山口氏の主張は、当該記事の本文中でも使用されている「賢い患者」という言葉に象徴されているといっていいだろう。

氏には同名の著書『賢い患者』(岩波新書)もあり、同書や今回記事の主張を要約すると、患者はただ受け身の立場で言われるままに治療を続けるのではなく、自分が受ける医療の知識を深め、能動的・積極的に自らの医療に関わってゆくことで、現代の様々な医療課題を医療者とともに考え解決していこう、と促す啓蒙活動、といっていい。自らの治療体験に基づくそれらの知見と長年の献身的な活動には、率直に敬意を表したい。

治療費の支払い額がこれ以上増えないという理由で患者が多くの薬をもらったり、さほど必要ではなさそうな通院回数を増やしたりするような行為を、公共経済学では「事後的モラルハザード」と呼ぶ。

このような行為をどうすれば抑制できるか、また、これを抑制することで国民医療費などマクロの医療費をどれだけ抑えることが可能なのか、という議論は、研究者たちの間でさかんに行われてきた。その意味で、山口氏の「賢い患者」論は事後的モラルハザードを抑制しようとする啓発の一環といってもいいかもしれない。

ただし、患者の受診行動や薬剤処方の抑制は、疾患や病態、受診環境の違いなどによって様々で、それぞれをきめ細かく検証して適応させていく必要がある。