比例復活が問題なら、定数削減でなく制度変更すればいい 

「身を切る改革というなら、議員定数削減ではなくて議員の歳費(給与)を削ればいい。比例復活のゾンビ議員が問題なら、定数削減ではなく制度を変更すればいい」

いずれもごもっともだ、という正論だろう。「身を切る改革」で議員定数削減するというのは維新の看板政策だ。2011年には大阪府議会の定数を118から88に2割削減した。吉村氏らは「維新の原点だ」と胸をはるが、その後の大阪府議会はどうなっただろうか?

中選挙区に近かった制度が、一つの選挙区から一人しか当選しない小選挙区が全体の7割程度まで激増した。一つの選挙区から数人が当選する中選挙区制度と違って、少選挙区だと1位の候補だけが当選していくため、そのときの支持率次第では一つの政党が大勝することもある。

2015年の府議選では定数88のうち50議席以上を維新が占めて、一人勝ちだった。つまり、「身を切る改革」を掲げつつ、結果的には自分たちに有利な選挙制度に変わっただけのようにもみえるのだ。

自民党内でも選挙制度を検討している「選挙制度調査会」の逢沢一郎会長は16日には自身のX(ツイッター)で「身を切る改革イコール議員定数削減ではない。自民、維新でいきなり削減は論外です」と批判した。逢沢氏は与野党で選挙制度を協議する「選挙制度協議会」の座長でもある。

これまで国会の慣習として、国会議員の身分に関わる選挙制度や議員定数は与野党の合意を前提にしてきた。今回の自民と維新の約束を本当に今国会で果たすには、野党の反対を押しのけ、自民党内の反対も押さえつけないといけない。高市総理はまず逢沢氏を更迭しないと始まらないだろう。

さらに、自民と維新は衆参両院で少数与党だ。衆院で2議席、参院で5議席足りないため、他の野党からの協力がなければ定数削減の法案は通せない。

自民ベテラン「維新に協力するふりをして廃案にして、その後はうやむやに」

 「維新に協力するふりをして廃案にして、その後はうやむやにするしかないだろう」

自民のベテランはそのようにささやく。同床異夢の自民・維新連立政権だ。強固な選挙協力を前提に26年も続いた自公連立とは何もかもが違う。ただただ脆弱だ。

選挙区調整もできないから、衆院解散でもあれば、同じ選挙区で戦う自民議員と維新議員もケンカになるだろう。さらに年内の議員定数削減という難問がたちはだかる。自民ベテランはこうささやいている。

「お互いをよく知らず、スピード結婚したんだから、スピード離婚もやむをえないよ」

取材・文/長島重治