「『一極集中』の構造を変える手段が必要」
学校現場では目下「働き方改革」が進められているが、稲積会長らによれば「管理職は余計に仕事が増えた」のが実態だという。
そうした現状を踏まえ、文科省主導のもとで昨年から始まったのが、副校長・教頭の業務を専門的に支援する『副校長・教頭マネジメント支援員』の配置だ。
しかし、簡単には進まないようだ。
「先行実施している東京都はかなり配置が進んでいるものの、全国的にはまだほとんど進んでいません。必要な予算の3分の2を自治体が負担するのですが、自治体によっては予算がなかなか回ってこないという実情があります」
書類仕事などのDX(デジタルトランスフォーメーション)化も進み始めているが、「もともとの書類の量が膨大」だったと稲積会長らは話す。
「以前は学校に1ヶ月で300通以上の文書が来ていました。それが減ったところや、自治体によってはメールに変わったところもありますが、いまだに紙の文書のところもあります」
業務の考え方を明確化し、役割分担や適正化を推進する目的で文科省から示された「学校・教師が担う業務に係る3分類」では、事務職員や専門スタッフらの活用を進める方針だ。
稲積会長らは「今後、専門職が増えていくことで、副校長・教頭が本来の学校業務に専念できるようになるのでは」と前置きしたうえで、「構造的に変える手段」が必要だと話す。
「そもそも、一般的な会社や行政組織だと一人の管理職がマネジメントできる人数はせいぜい10人程度ではないでしょうか。それが学校の場合だと、一人で数十人の職員、数百人の児童生徒を見ますので、構造的にどうしても一極集中になってしまいます。その構造を変える手段があれば、と考えています」
副校長・教頭の「やりがい」とは?
国や行政は動いているものの、まだ十分に改善しているとはいえない副校長・教頭の勤務実態。そうした仕事に「やりがい」は感じるのだろうか? 稲積会長らは次のように話す。
「当会の調査では、『副校長・教頭としてやりがいを感じる職務』という設問に対して、『教職員の育成』という回答が最も多い結果となりました。副校長・教頭は『職員室の担任』とも言われますが、やはり職員の成長にやりがいを感じる副校長・教頭が多いようです。
次いで『職場の人間関係』、『児童・生徒指導上の課題への対応』です。副校長・教頭は先生たちから相談を受け、それに対してアドバイスを行ないますが、それが児童生徒に反映されてうまくいくとやりがいにつながります」
前出の千葉の現役教頭は、「忙しいけれども、面白さもある」という。
「副校長・教頭の仕事は忙しいですが、逆に言うと学校のことをさばけます。職員に指示がどんどん出せて、それでみんなが動くので、そういった点では面白いですね。すぐに結果が見えるので、そこはやりがいになります」
前出の60代男性も「教頭が元気な職場は活気がある」と話す。
「教頭は大変ですがやりがいがあり、職員の要として学校を動かしているという実感があります。教頭が元気な職場は活気があり、目的を持って教育活動を行なっていく集団になります。教頭先生は、若い職員にとって、自らの将来の姿を重ねる存在であると思います」
副校長・教頭は校長のイスに座るうえでの“通過点”ではないようだ。日本の未来を担う教育現場に活気を取り戻すべく、改革がさらに進んでいくことを期待したい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













