国境を超えたアングラマネーの一部が晴海フラッグに
直近では、カンボジアに拠点を置く中国人の特殊詐欺グループが日本在住の高齢者をターゲットとした特殊詐欺で得た収益で東京のマンションを購入するという、マネーロンダリング(資金洗浄)のスキームが既に構築されていたことも明らかになっている。
中国の富裕層の間では東京の新築マンションは「儲かる商材」として人気を博していることは周知の事実。国境を超えたアングラマネーの一部が晴海フラッグに流れ込んでいることは想像に容易い。
冒頭で紹介した、「8億ション」が誕生したタワー棟も勝どきや晴海など周辺のタワマンと比べて割安で販売されたため、人気住戸は倍率数百倍という「宝くじ」となった。
マンションに関する知識がある層からしてみれば、購入できれば数千万円の利益がほぼ確定しているのだ。筆者の知人の不動産投資家は「転売目的で、眺望の良い部屋にだけ集中して札を入れた」と明かした。
不動産デベロッパー側は東京都からの要請を受け、モデルルームでの見学会に参加してアンケートに回答した人のみエントリーが可能になるなど制限を設けたが、これもあまり意味のある対策とはいえなかった。
軽い気持ちで札を入れることは防げるかもしれないが、本気で転売を目指す人は、名義貸しなどありとあらゆる手を使ってこれらの障壁をくぐり抜けるからだ。

プロや中国人相手に素人の日本人が勝つのは困難な勝負
もともと、不動産購入は情報の非対称性が大きい市場となっており、資金力やノウハウでまさるプロや中国人に素人の日本人が勝つのは困難な勝負だ。
ここでも徒手空拳で挑んだ普通のサラリーマンが何度も抽選に落ちる一方で、様々なスキームを駆使した中国人や法人、投資家が抽選に当たったことは言うまでもない。
結局、安価な住宅を手に入れることができたのは運が良かったごく一部の住民に限られ、あとは中国人や法人に莫大な利益が流れたというのが晴海フラッグを巡る大騒動の顛末だ。もちろん、東京都も不動産デベロッパーも、誰も責任を取ることはない。
こうした経緯もあり、一部メディアでは「チャイナタウン」などと呼ばれている晴海フラッグだが、実際のところ、どうなのだろうか。9月の週末に現地を訪れてみた。