東大出身の新人候補は「利権ががっつりある中に1人で飛び込んでも…」

この演説を聞く聴衆はわずか10人程度でメディアのほうが多い状況の中、次にマイクを握った片桐氏は「今すぐ田久保市長を引きずり下ろせばこの市政が良くなる、そんな単純な話ではない。根っこはもっともっと深い」と市のこれまでの体質に問題があると主張する。

そこへ片桐氏と同じ航空自衛隊OBという香取良勝・岡山県朝口市議(82)も応援に到着。マイクを持つと片桐氏以上に市長擁護に力がこもり「田久保市長のどこが悪いんですか。学校出てないからああだこうだと。訳のわからんバカ議員が悪口の言い放題。マスコミがそれに乗って、YouTubeで(拡散)。訳のわからんこと言うなと。田久保市長は本当によくやっとる。なぜそれがわからんのか、市民が。少しはわかってください」とぶち上げた。

その演説会場のそばに事務所を置くのは不信任決議案への態度を「未定」と答えた無所属の新人、シュタインマン信子候補(50)だ。東京大学でイスラム学博士号を取得した研究者で海外経験が多く、空き家再生事業などに取り組む起業家でもある。

10月12日、取材に答えるシュタインマン信子候補 撮影/集英社オンライン
10月12日、取材に答えるシュタインマン信子候補 撮影/集英社オンライン

「田久保さんの支持者が集まる集会で“行政の公正な執行”などをテーマにした講演を行ない、市政改革の必要があるという考えは田久保さんに非常に近い人です」と田久保市長の支持者が話すシュタインマン氏に話を聞いた。

「田久保さんは公共工事を通じた利権構造をリセットする改革を目指し、それが支持されて当選したことは確かです。それで総工費42億円の新図書館建設計画をいったんは止めました。

でも、しがらみと利権ががっつりある中に1人で飛び込んでも変えられない現実は結構あります。彼女の当選で始まった改革の流れが逆回転してハコモノ行政に戻れば、伊東市を立て直すことは難しくなると思い市政改革実現のため立候補しました」(シュタインマン氏)

さらに田久保氏の不信任決議案に対する態度を決めていないとしていることについては、

「学歴詐称疑惑に対し(田久保市長が)市民に説明責任を負うのは当然のことで、そこを負っていないことは私も弁護はできないし、市民の気持ちが離れることを防げていない。

(自分が市議に当選した場合は)市民を代表する立場として、市民の意見を汲んで(不信任への態度を)どうするのかは慎重に決めたいですが、その後に(市長の)適任者がいるのか、その人が果たして当選する可能性が高いのか、といったことが見えないのが現実ですから…」と話す。

9月1日、伊東市議会本会議で全員一致で不信任を議決された田久保眞紀市長 撮影/集英社オンライン
9月1日、伊東市議会本会議で全員一致で不信任を議決された田久保眞紀市長 撮影/集英社オンライン