地方創生の一役を担う「ご当地ラーメン」の可能性 

そして、福島県喜多方市でも2024年4月に「ラーメン課」が新設され、山形県南陽市と正式に協定を結ぶなど、広域連携の動きが生まれている。喜多方ラーメンはすでに全国的な知名度を誇るが、行政が積極的に関与することでブランドの再活性化を図っている。 

喜多方駅にあるポスター
喜多方駅にあるポスター
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南陽市と喜多方市の両市長が互いのラーメンを食べ合う「食べ交わし」イベントを実施し、自治体間の観光連携をアピールしたことは記憶に新しい。ラーメンを通じて市境を越えた協力体制が築かれていることは、ご当地ラーメンが単なる地元アピールにとどまらず、地域間連携や地方観光戦略の一翼を担い始めていることを示している。

これらの自治体は「ラーメンを地域資源として活用する」という明確なビジョンを描き、そこに行政のリソースを投下していることが大きい。観光の目玉にする例もあれば、移住支援に生かす例もあり、さらには広域連携の起点とする動きもある。手法は違えど、地域の歴史や文化に根ざした「ご当地ラーメン」を土台に、新しい動きをつくり出している点で共通している。

さらに、ここで忘れてはならないのが、ご当地ラーメンを全国区に押し上げるためには先駆者的なお店の存在が不可欠であるという事実だ。山形における「龍上海」や、新潟の「らーめん潤」が果たした役割はまさにその象徴である。

行政の後押しだけではなく、地元から飛び出して挑戦した店が旗印となり、消費者の記憶に地域の味を刻み込む。まずは全国にその味を知られることがスタートで、こういった先駆者的なお店の功績は大きい。

ご当地ラーメンには経済、文化、観光を支える大きな可能性が広がっている。今後も全国のご当地ラーメンの活発な動きに期待したい。

取材・文・写真/井手隊長